第1回 ~校正ってなに?~

 校正とは「文字、文章をくらべあわせ、誤りを正すこと」(『日本国語大辞典』第二版、小学館)です。その意味も時代とともに変わってきました。特に、現代においても手書き原稿時代とワープロの普及以後でその在り方は大きく変化しました。

 以前は作家先生の書いた原稿と実際に印刷される印刷物との差異を埋めるため、文字通り一文字一文字見比べてチェックしていました。しかし今ではDTP(Desk Top Publishing)が進化し、コンピュータ上で文章の打ち込みからレイアウト、体裁管理まで出来るようになりました。加えてSNSやブログ、Twitterなど私的に文章を書いて多くの人の目に触れさせる機会も増えました。勿論、同人誌という形で商業出版だけに限らず発信する機会も。そんな中では見比べる作業より、単純誤植や内容矛盾がないかのチェック、いわゆる「素読み」に重きが置かれるようになりました。

 誰でも文章を書いて発信できる。これは素晴らしいことです。何をどう書くか。これは書き手に完全に委ねられます。では書きあがったらどうするか。投稿するもよし、同人という形で本にするもよし。半年は温めておくのも大事、とスティーブン・キング(※1)は言います(スティーブン・キング著、田村義進訳『書くことについて』小学館、2013年)。

 さて、どうするにしろ、やらなければならない作業があります。それが「校正」です。えっ?見直しでしょ?そりゃやるしちゃんとチェックしてるって。皆さんそう言います。しかし、恐ろしいことに人間は「自分が書いた文章をミスなく見直す」ことが非常に困難なのです。考えてみれば簡単でして、間違った文章を打とうと思って打っている人はいません。加えて、自分の文章は自分の中で脳内補完してしまって違和感を覚えにくいため、初見の人にとってどう見えるかという視点を見失ってしまいがちである、という点が挙げられます。また、重なる疲労やついノッてしまって走る筆というかキーボード。これも相まって完璧な原稿を一発で仕上げることは非常に困難です。何千字程度ならまだしも、何万、何十万字ともなれば当然です。

 そこでまぁ少しぐらいのミスはいいかと見直しに妥協をするとどうなるか。読者視点になりますが、宜しくありません。例えば、料理に入れる調味料が間違っていたり、入れるべき具がなかったり、髪の毛が混入していたりしたら、それがどんなに美味しいものでもどんなに心を込めて作られていてもそれを味わう人の心証が悪くなるのは想像に難くありません。逆に、細かい点までしっかりした作りの料理に出逢った人はこう思うでしょう。良い店だった、また来よう。クオリティはファンに繋がります。

 さてそこで校正作業をするワケなのですが、これがまた不思議なことに見るたびにミスが見つかるのですよね。実に不思議です。私も職として校正をやるにあたって訓練しましたが、しみじみ思いました。校正は技術である、と。

 見るのではなく観る。JOJOで荒木先生も言っておりました。漠然と見るのではなく、チェックポイントを絞って照合していくことがミスの発見に繋がります。人物の名前が間違っている、固有名詞が間違っている、呼称が変わっている、着用していた服が変わっている、天気がおかしい、あなたそれ右手に持ってたのに左手になっているよね、単位や数字が漢数字なのか算用数字なのかハッキリしない、同音異義語が間違っている、文章の繋がりがおかしい、文法が間違っている、慣用句が間違っている、言葉の意味を間違って使っている、差別語と呼ばれる単語をがっつり使っている、打ち損じて意味の分からない言葉になっている、同じ内容の表現が重複している、オリジナルのルビがあるのはいいものの一貫していない、戦闘シーン描写があきらかにおかしい、魔法でもないのに物理法則無視、句読点が勢い余って二個ある、曜日や日時に齟齬がある、などなど。

 一つ一つは大したことじゃありません。が、それをしっかり全部見ようとすると正直注意力が持ちません。頑張っても予想以上に疲れる上に締め切りや仕事の関係で時間がない、という事情もあるでしょう。もう、これで。とどこかで入稿しなければなりません。

 なお、こう書いてはきましたが、実際にはクリティカルなミス以外は読者も校正者も寛容です。気にはなりますが。気にはなりますが!
本当に校正という作業は他人の目を借りないと難しいものです。著者に任せるだけでなく、出来れば校正というサービスを同人の範囲でも提供したいと思っていますが、それはまた別の話。

 こちらでは入稿もしくは投稿に至るまでに少しでも効率良く校正が出来るように次回から具体的な事例を挙げつつポイントを書ければと思います。

※1 ※1 アメリカのホラー小説家。代表作に『スタンド・バイ・ミー』『グリーンマイル』『霧』など。

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