箱庭に雨は降らない

arasuji
――死者を弔う機械人形の、お伽噺めいたSF。

死の病が蔓延るミゼルカで、機械人形のマリーは「弔うこと」を生業にしている。
とうとうミゼルカの生存者が最後の一人となり、その死を看取りに行こうとしたマリーは科学者の亡霊ダニエルと出会うのだが……。

孤独に生きることを強いられ、ミゼルカの住民に保証されていたはずの「安らかな死」を迎えられなかったダニエルの犯した罪とは。
機械仕掛けのマリーの祈りとは。

※著作者様サイトから転載しております。

kansou

 読み終わった時には、言葉にならない感情でいっぱいでした。
 箱庭の世界で、人を弔う機械人形の物語、という浪漫溢れるあらすじと、美しい表紙に惹かれて手に取った物語でしたが、最後の最後まで読み通して、機械人形マリーとソロル、そして、箱庭最後の人間であるダニエルがそれぞれの胸に抱えていたものを考えると、本を閉じた今でもじわりと何かがこみ上げてくるのを感じます。
 私は特にダニエルという人間に焦点を当てて読んでいたので、ダニエルの狂おしいほどの思いと、その思いの結果としてもたらされた全ての出来事、その象徴であるマリーとソロルを前に、諦観とそれでも諦めきれない感情とがない交ぜになった言動に胸を突かれました。そして、ダニエルとの出会いから変化していくマリーに対し、ダニエルの視線も変化していく、その過程に一喜一憂させられた気がします。
 何より、この物語は最初から「全てが終わってしまった後」の物語であり、そんな物語の中で、ダニエルがマリーの『願い』を叶えるシーンは、切なさに胸がいっぱいになりました。
 ダニエルが、別れ際にマリーにワンピースを着せたこと。それこそが、ダニエルがずっと孤独に抱え続けた思いの形であり、マリーにとっての「救い」の形だったのだと、考えずにはいられません。
 だから、この物語の結末は、何よりも優しく幸せな結末なのだと思います。
 裏表紙に描かれた、彼らの元に歩いてゆくマリーの姿を見て、尚更、それを確信するのでした。
 切なく、胸が苦しくなる、けれどとても素敵な、悼みの物語でした。

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発行:フロッケリプカ
判型:A5  122P
頒布価格:500円
サイト:フロッケリプカ
レビュワー:青波零也