報酬系の使徒たる彼女等

arasuji

※※この作品はR-15です※※
流血・残酷描写を含み、
生理的嫌悪感を催す可能性がございます。

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彼女等は常に君とともに在り続ける
その脳膜の下 シナプスの交わる場で 絶えず報酬を喚起する電彩
彼女等はただそのようにして在り続ける――

【少女+キーアイテム+※※欲求】をコンセプトにお贈りする、
不条理連作短編《報酬系》シリーズ総集編。

消費したってしきれない、悪質極まる妄想譚。

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既に同人誌発行をした
『例えばC君が箱を出るに至る話』(頒布終了)、
『その水に口をつけたW氏の顛末』、
『あの絵と同棲するPさんの弁明』(ともに頒布継続中)に加え、
新作『この人形と戯れるD女史の手記』、『どの林檎も掴めぬ少年Aの証言』、
またプロローグ・エピローグにあたる『M先生の憂鬱なる回想』『拝啓、M先生』を
一つにまとめて収録しました。

癖が強い作品集ですので、迷われる場合
別途頒布中の『その水に口をつけたW氏の顛末』もしくは『あの絵と同棲するPさんの弁明』で
試読されることをお奨め致します。

以下、収録作品(プロローグ・エピローグを除く)の簡易紹介です。

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『例えばC君が箱を出るに至る話』

C君が目覚めると人としてのC君は既になく、 物のとしてのC君だけがあり、
それはもはや彼自身の物でなく、そう、“少女”の物だった――
隷属せずにはいられない、僕らのための妄想譚。

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『その水に口をつけたW氏の顛末』

「だからあたしは水になるの。
水になって、H2Oになって、その小さな小さな分子の、その一部になるの。
あたしの存在は極限にまで希釈され、すべてのものにいきわたるの。
あたしは誰のものでもあって、誰のものでもなくなるの」

冴えない中年用務員・W氏は或る晩、プールに忍び込み水中で踊る少女と出逢う。
その舞踏のうつくしさに圧倒されたW氏は彼女に懇願しその観客者たる資格を得る。
それからふたりには奇妙な交流が芽生えるが――

独占せずにはいられない、僕らのための妄想譚。

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『あの絵と同棲するPさんの弁明』

「あれはここではないどこかに繋がっているの。
そこでわたしはようやく報われるの。
生活は、すべてなかったことになり、安楽だけに包まれる――
そんな、絵に描いたような世界に続いているの」

会社員・Pさんはある時、付き合いから訪れた画廊で一枚の絵画を購入する。
家族の団欒を描くその絵の中、少女は、ひとり動きだし、微笑み、Pさんに話しかけた。
次第に彼は彼女と過ごす時間にのみ、この世の意味を見出すようになるが――

逃避せずにはいられない、僕らのための妄想譚。

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『この人形と戯れるD女史の手記』

「〝わるもの〟が、わるいの――そんなのね、あったってむだなだけでしょう? 
だからわたしが、こわしてあげるの。
ばらばらにして、こなごなにして、ぐちゃぐちゃにして、もううごかないようにして、
これいじょうむだがないようにしてあげるの」

公務員・D女史は母の死をきっかけに、長らく離れていた実家に戻る。
人形作家である母が彼女に遺したのは無数のパーツと、そして自律して動く少女人形だった。
少女との無邪気な遊戯に耽るD女史は、自身に迫る不穏な影に気付き、ある決意をするが――

破壊せずにはいられない、僕らのための妄想譚。

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『どの林檎も掴めぬ少年Aの証言』

「〝聖なる林檎〟を食べましょう。
たくさん、たくさん、何もかも忘れるまで――そうして、私と貴方はひとつになる。
そうすればもう何もこわいものなんて、ないのです。
私は貴方のその身の内から、永遠にあなたを承認します」

父の暴虐に怯えながら受験生として日々を過ごす少年Aは、
ある日ふとしたきっかけで『セイクリッド・アップル』というゲームの“スペシャル・プレイヤー”に選ばれる。
ゲーム内でパートナーである少女と共に過ごすうちに、その心身に異変が起こるようになるが――

承認されずにいられない、僕らのための妄想譚。

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(第四回Text-Revolutions Webカタログより転載)


kansou

肯定と救い。とても甘い。
だけどとびっきりの毒が含まれている。
そんなことは『彼等』もそれとなく知っている。
でも呑んでしまう。
だって、毒を飲まない世界に価値なんて見いだせない(あるいは見いだせなくなってしまった)から。
ドーパミンに浸される歓喜。すがっちゃうよね。
効果が永遠に持続する麻薬があったら飲んじゃうよね。幸せだもん。
この世界で生きづらいのならば、この世界からずれてしまってもいいんだよ。
甘い甘い囁きに導かれて、『彼等』は報酬系の働きに依存していく。

生きづらさというのは外から見てもわからないものだ。当人だってわかっちゃいないこともある。そもそも気づかないまま「神経」をすり減らしているかもしれない。
そうした辛さを掬い上げてくれる彼女等に惹かれてしまうのは自然なこと。
受け入れられる快はなにより強いものだから。

ここからの脱出を(意識の差はあるにせよ)はかる『彼等』に待ち受ける彼女等。
それは?彼等?に示された限りない(唯一の、ではない)甘美な肯定の道筋。
自己実現ができるのは自身を肯定できる人間か、実現の度合いを低く設定した人間ぐらいだ。前者に憧れ夢破れるか、後者を目指しくすぶり続けるか。
いずれにせよ人はそんなに強くない。

自覚のあるなしは別に、薄皮一枚か二枚くらい世間とすれ違ってしまっている?彼等?。
そんな『彼等』が示唆するのは僕たちでもある。
つまり、彼女等は誰のもとにでもやって来るってことで……

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発行:こんぽた。
判型:B6 168P
頒布価格:1000円
サイトこんぽた。
レビュワー:シワ