《童話》馬術のおねえさん

《まえがき的なものっぽい》
 こんにちは。童話をいつも書いています、同人作家の悠川白水です。今回は、心のふれあいをテーマにしたオリジナル創作童話『馬術のおねえさん』をお送りします。ではどうぞ。

《馬術のおねえさん》
 小学校の前には、とても広い道路があります。小学校に通う児童たちは、登校するときに、そのとても広い道路を、横断歩道で渡らなければいけません。
 春から六年生になった、女子と男子が三人ずつの仲がよい六人の子どもたちは、一年生のときから一緒に登下校しています。そして、毎朝信号が青になるのを待っているとき、この春からすらりと背が高くて、とてもすてきなお姉さんと、一緒に信号を待つようになりました。
 お姉さんはスポーツをしているようでした。長い髪を後ろでひとつ結び、いつも運動しやすい服装で、軽やかに道を走っています。
「お姉さん、おはようございます」
「はい、みんなおはよう。今日もみんな元気みたいだね」
 歩道に植えられている桜の木が、青々とした葉っぱをたくさんつける季節になると、子どもたちとお姉さんは、信号待ちをしているときに、あいさつや会話を交わすようになりました。
「いつもお姉さんは走ってるんだね」
「そうだよ、お姉さんは馬術の選手だからね。朝は走ってトレーニングしてるのよ」
「へえ、すごいなあ」
「みんな、今日もたくさん遊んで勉強して、楽しく学校で過ごすんだよ」
 信号が青になると、お姉さんは児童たちに笑顔で手を振り、まるで風のように走っていくのでした。
 いつも明るく元気なはずのお姉さんは、しかし子ども達に隠していることがあります。
「左のひじは痛みますか?」
「はい、まだ少し痛みます。いつぐらいに馬には乗れるのでしょうか?」
 お姉さんは、お医者さんに通っていたのでした。
「そうですね、順調に回復はしていますから、お正月ぐらいには大丈夫だと思いますが、しかし、まだしばらくかかるでしょう」
「そうですか……」
 お医者さんの答えに、お姉さんはとても残念そうでした。
 お姉さんはとても上手な馬術の選手でしたが、ある大会で障害を飛び越えるときに落馬してしまい、そのとき左のひじに、大きなケガをしてしまったのでした。
 そのままお医者さんを出たお姉さんは、いつも自分が乗っていた愛馬がいる厩舎へ行きました。
「ごめんね、まだ乗ってあげられないって」
 お姉さんが悲しそうに馬の頭をなでると、馬も寂しそうにいななきます。長い時間をともに過ごしてきたお姉さんと愛馬は、言葉が通じなくても心は通じるようでした。
 お正月を過ぎて次の春がやって来る前には、大きな大会もありますが、ケガが治ってすぐでは、とても大会で勝てそうにはありません。お姉さんは、日に日に元気がなくなっていきました。
 そんなお姉さんにとっても、朝のトレーニング中に出会う子どもたちは、寂しさが少しでも忘れられる心地よい時間でした。
 桜の葉っぱが色づいて、半分ぐらいが落ち葉になった季節になると、お姉さんと子どもたちは、たくさん会話するようになりました。
「ねえ、今度お姉さんがお馬さんに乗ってるところ、見たいな」
「えっ?」
「うん、見たい見たい」
 子どもたちに次々いわれて、お姉さんは戸惑います。
「だって、もうすぐ私たち卒業だもん」
 そう言われて、お姉さんはハっとしました。小学校を卒業したら、子どもたちとはもう会うこともなくなってしまうでしょう。そして、この六人がいっしょに登校することも。
 この子たちとの最後の思い出に、気持ちよく愛馬とともに活躍するところを見せたい……お姉さんの心の中で、消えかけていた炎が灯ったようでした。
「ようし、みんなが卒業するまでに、お姉さんがお馬さんに乗ってるところ、見せてあげるからね!」
 お正月が過ぎ、お姉さんのケガはようやく治りました。そして、愛馬といっしょに毎日一生懸命練習に励みました。

 小学校の卒業式が終わった翌日、子どもたち六人はバスに乗り、馬術の会場へお姉さんを見に行きました。
「わあ、すごい人だね」
 会場はとても多くの人がいて、迷わないようにするだけで大変です。六人は何とか見えそうな席に座ることができました。
 子どもの背丈ぐらいはありそうな柵を、いろんな馬が次々と飛び越えていきます。そして、ついにお姉さんと愛馬の出番がやってきました。
「みんな、見に来てるかしら……あっ」
 お姉さんは、観客席を見て児童たちを見つけることができました。
「ようし、行こう。お願いね」
 お姉さんは、愛馬の耳元でささやき、首筋をなでてやります。愛馬はとても落ち着いた様子で前を見据えています。そして、会場へと勢いよく駆けだしていきました。
「あっ、あれお姉さんだよ」
「わあ、かっこいいなあ」
「がんばれー」
 お姉さんと栗毛の馬は、高い障害を次々と飛び越えていきます。子どもたちにはまるで、お姉さんとお馬さんが一体となったように見えました。そして、お姉さんは落馬することなく無事に競技を終えることができました。
「お疲れさま、よく頑張ってくれたわね。ありがとう」
 愛馬から下りたお姉さんは、満足そうに愛馬を撫でてあげました。
「おねえさーん」
 しばらくすると、子どもたちがお姉さんと愛馬のところへやってきました。
「みんなもありがとうね。お馬さんに乗ったお姉さん、どうだった?」
「すごくかっこよかったよ!」
「僕たちはもう小学校を卒業しちゃうけど、お姉さんのこと忘れないよ」
「うん、お姉さんもみんなのこと忘れないからね。中学校に行っても、みんな元気に仲良くね」
 お姉さんと子どもたちは、お姉さんの愛馬の前に集まり、記念写真を撮りました。その写真は、お姉さんのお部屋に、輝くメダルとともに飾られています。

《あとがき的なものっぽい》
 いかがでしたでしょうか。未熟ではございますが、最後までお読みいただきありがとうございます。
 私はこういった童話を得意としています。童話以外は書いたことがないわけではっはっは……

「うそつけ! あんたライトノベルでヒロイン☆ふぇすた出てたし!」
「そうだそうだ! ミニ四駆同人ライトノベルのパイオニアとか吹聴してるのはどこの誰!? あんただあんた!」
「わたしは見たわよ! タブレットマギウスで、ばりばり恋愛ラノベ書いてるでしょーが!」

 ……ば、ば、

 バレたかーッ!!(今さら)

 ……スイマセン、種明かしすると童話は得意ってのはウソで、今回はじめて書きました。いつもお馴染みの方には、まえがき一発目から違和感ありまくりでモヤッとしていたかと思いますが、こういうオチです(笑)
 手探りで書いた習作みたいな作品ですが、童話って表現の制約もありますし、普段書いてるライトノベルに比べて結構難しいですね。童話作家さんは技量すごいなと実感。
 趣向が違った作品ということで、お楽しみいただければ幸いです。


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サークル名:白水の小説棚(URL
執筆者名:悠川白水

一言アピール
「テキレボ5当日企画まとめ」の中の人こと、サークル「白水の小説棚」の悠川白水です。今回新刊は出さないので、このアンソロが唯一の新作ということになります。但し《シェアワールド/電書魔術プロジェクト・タブレットマギウス》関連は、テキレボに本格初上陸となりますので、そちらはぜひよろしくお願いします。

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