スーパーヒーロー決戦~リーガルフェスティバル

 どうしてこうなった?
 九条カイトは目の前の光景に首を傾げる。
「やりあうのは久しぶりだな、御瀧嶺二検事」
「ふっ、多少は成長が見られるといいんだがな、赤居正輝弁護士」
 何やら意味深な視線を向け合う男が二人。御瀧はお高そうなスーツを身にまとい、赤居はTシャツにベストというラフめな格好。どちらも胸元にバッジがついているが形が違う。検察バッジと弁護士バッジ。
「あの?」
 途方に暮れて声をかけると、
「大丈夫! 俺がしっかり弁護しますんで!」
 赤居が言った。テンションの高さが逆に不安だ。っていうかこれは、
「裁判だよなぁ」
 カイトは呆然と呟いた。さっきまで鳥類戦隊バードマンのレッドピーコックとして敵と戦っていたはずなのだ。なのに気づけば法廷で被告人扱いされている。なぜだ……これも敵の攻撃なのか……。他のみんなはどうした。
 答えが出ぬまま裁判長が入廷する。公判開始。
 起訴状の朗読が始まる。
「被告人九条カイトは、五月十六日午後三時頃、敵と交戦中だった疑心暗鬼ミチコ、七転八倒富子、七転びヤオ君子、四苦八苦久美子ら四名に殴る蹴る必殺技をかけるなどの暴行を働き、同人らを意識不明の重体の状態に陥らせた。また同日午後六時頃、戦闘を終え帰宅途中のブラックラビットファー、ホワイトラビットファーにも同様に攻撃をし、意識不明の重体とさせた」
 いや、誰だよ、
 御瀧検事が優雅な顔をして起訴状を読み上げるが、出てくる単語が意味不明すぎる。疑心暗鬼ミチコ? ラビットファー? なんだそれ、ヒーローかよ。
「ヒーローたるものが同じヒーローを襲うとは、嘆かわしい」
 御瀧検事が呟く。あ、やっぱりヒーローなんだ。っていうか、
「え、俺のことバレてるの?!」
 正体は隠さないとやばいのに!
「ヒーロー同士だから正体バレのペナルティは発生しないから大丈夫っすよ!」
 明るく赤居が言う。
「え、っていうことは……」
「俺は法律戦隊ベンゴシジャーのケイジレッド。あいつは、俺の仲間で」
「ケンサツ・カーンだ。この法廷はヒーローを裁くための特別法廷。超法規的措置で正体バレのペナルティは発生しない。変身もできないがな」
「裁判を終えないと出れないンすよ」
「なるほど……」
 いや、なにがなるほどなのかわかんないけど。
「さて、被告人は以上の公訴事実について何か言いたいことはありますか」
「あ、あの、俺、やってません!」
 慌てて口にすると、
「そうっす! 被告人は無実っす!」
 赤居がうんうんと大きく頷く。とてつもなく不安な弁護人に、無理かもとカイトが落ち込んだところで、
「そこまでです」
 凛とした声が法廷に響き渡る。
「弁護人交代です。この裁判、わたくし、リーガルユカナの領分です」
 つかつかと法廷の中に入ってきた、ピンクのスーツの女が言う。
「いや、弁護人交代って」
 赤居が慌てるが、
「よろしいですよね、裁判長?」
 言い聞かせるようなリーガルユカナの言葉に、
「認めます」
 裁判長はすぐに頷いた。
「え、なんで!」
「はい、どいて」
 赤居を押しのけ、弁護人席につくとリーガルユカナは、
「被告人は犯人ではありません。それを証明するために証人を呼びます」
「え、今?」
「今です。よろしいですよね、裁判長?」
「認めます」
「なんで認めるんだよ!」
 赤居がうるさい。しかし、裁判長、弱味でも握られてるのか? 唯唯諾諾と従っているが。
 疑問が顔に出ていたのか、リーガルユカナはカイトを見て小さく笑うと、
「魔法の法は法律の法ですよ」
 と意味わからんことを言った。
 そして、
「白藤さん、どうぞ」
 声をかける。黒スーツに白い手袋をはめた優男が証言台に立つ。
「お名前とご職業を」
「白藤銀次。職業は鈴間屋コーポレーションの鈴間屋アリスお嬢様付き運転手です。そらから、メタリッカーとしてX退治をしています」
「め、めたりっかー??」
 またヒーローなのだろうか。
「あなたが見たことをお話頂けますか?」
「話せば長くなるのですが」
「今回四千字しかないので」
「では結論だけ。これは戦隊ヒーローと戦う魔女っ子を争わせるための敵の罠です」
「罠?」
「そう、敵の目的は正義の味方の断絶です。幸い私は物理では戦わない魔女っ子なので狙われず」
「俺も、戦隊ではないので除外されました」
「しかし証拠は?」
「ありません」
 リーガルユカナが優雅に微笑む。
「ないのかよ!」
「ですが、問題もありません。ここは法廷、私は魔女っ子弁護士。最初に言ったでしょう? これは私の領分です、と」
 微笑んだまま、彼女は勿体つけて銀次に問うた。
「あなたが見た敵はこの法廷内にいますか? いるなら指をさしてください」
「はい」
 そして銀次が指した先にいたのは、
「裁判長?」
「こ、これはどういうことですかな。私への冒涜かね!?」
「どうもこうもありません。事実の摘示です」
 そしてリーガルユカナは六法全書を開くと厳かに唱えた。
「え、条文??」
 刑事訴訟法二十一条一項を。赤居のツッコミを無視して彼女は唱え終わると、高らかに宣言する。
「忌避!」
「うわっ」
 法廷内が光に包まれ、咄嗟にカイトは両腕で顔を覆い、目を閉じた。
 次に目を開いた時には、
「なんだ、あいつっ!」
 裁判長が座っていた場所に、骨骨した黒っぽいザ☆敵の怪人! といったものがいた。
「あれが、今回の敵ジャッジメントの真の姿です」
「え、いや、何で姿がっ?!」
「魔法の法は法律の法ですよ」
「なるほど、魔法の力か……」
  御瀧が重々しく呟く。そんなテンションで呟くことだろうか? カイトにはよくわからない。
「この人、アキに似てるなぁ……、頓珍漢なところが」
 自分の仲間を思い、小さく呟いた。
「ええい、バレてしまっては仕方ない! 者共、であえー!!」
 ジャッジメントが叫ぶと、どこからかぞろぞろと現れる雑魚兵たち。
「ダウザーっ!」
「オフェンダー!」
 カイトと赤居がそれぞれ見知った顔を見て叫ぶ。
「あとは、イチゼーンとシャサールか」
 あたりをみまわし、銀次が言うと、ユカナが頷いた。
「ええ。疑心暗鬼ミチコたちの敵と、ラビットファーの敵ですね」
「ゴシーンとXがいないということは、やはり俺達はカウント外なんだろうな」
「二人で納得しあってないで、手伝ってくださいっ!」
 わらわらと襲ってくる敵を素手でぶちのめしながら、カイトは叫ぶ。
「変身できないことが仇となるとはな」
「よっし嶺二、どっちが多く倒すか勝負だ!」
「まったく君は……血の気が多いねぇ!」
  赤居と御瀧も軽口を叩き合いながら敵を倒していく。
「リーガルユカナ!」
「ちょっと待ってください! ここから出る方法を探します!」
 ユカナは必死に六法をめくる。
「多分、こっちだよ、ユカナ!」
 ユカナのピアスから元の姿に戻ったモモイロインコのチャーリーが嘴を挟む、文字通り。

 なんやかんやあって、

「みんな、行くぞ!」
 勢揃いしたヒーローヒロインたち。巨大化したジャッジメントを前に、カイトは声をかける。そして卵の形をした変身アイテム「エッグチェンジャー」を掲げると、バードマンの仲間達と声を揃えて唱えた。
「孵化! 換羽!」
 続けてベンゴシジャーや疑心暗鬼ミチコたちも変身していく。全員の変身が終わったところで、名乗りタイムだ。
「孔雀は羽ゆえに人に獲らる、レッドピーコック!」
「能ある鷹は爪を隠す、ブラックホーク!」
「鶴の一声、ホワイトクレイン!」
「ダブルイーグル、イエローアルバトロス!」
「頭隠して尻隠さず、ブルーオーストリッチ!」
「鳥類戦隊バードマン!」
 的な感じで名乗りを終える面々。元々変身後の姿であるユカナはそれをぼーっと見ていたが、みんなの視線が自分に集まっていることに気がつくと、
「あ、えっと、ぴ、ピンクハリケーン! リーガルユカナ!」
 慌ててそれっぽいことを言った。
「さぁて、字数もないしいきなりフィニッシュ決めさせて貰うわよ!」
 ブラックラビットファーはホワイトラビットファーと向き合うと、
「ラビットビビット」
「フェイクファー!」
 必殺技を放った。それに続いて
「デーモンハートキル!」
「バッタンバッタン!」
「セブンローリングエイト!」
「エンゲージメント・ウィズ・デス!」
「メタリッカースーパークラッシュ!」
「ファイナル・フェザー・アタック!」
「ウィニング・ロースゥー!」
 戦わない魔女っ子のユカナはみんなの怒涛の必殺技をおろおろして眺め、
「どうしよう、チャーリー!」
「六法でも投げておけば?」
「必殺技がないなら下がってなさい」
「あ、アリスさん」
 銀次の雇い主、鈴間屋アリスが苦笑しながら言った。
「どうせオーバーキルよ」
 アリスの言葉どおり、ジャッジメントが
「もっと活躍したかったぁぁー」
 そう言い残し、爆発四散した。

 *

 なんだ、これ?
 ヒーローヒロイン達が日常に戻ってワイワイしているエンドロールを見ながら、神山隆二は思った。明かりがつくと、シアター内にざわめきがやってくる。
「はー、さすが、板木監督。素面アクション多くてやばいわー」
 隣のマオが手で顔を覆うと、呟いた。
「魔女っ子勢揃いの足元のカットも超坂木監督っぽい! やっぱりBD買おう、メイキング見たい」
 何言ってるか全然わかんないんだけど。
「これ何なんだ? 色々人が出てきて賑やかって感じだったが」
「ヒーロー決戦シリーズはお祭り騒ぎが売りだからね。話よりアクションを楽しむものだよー。今回はリーガルフェスティバルって言ってるくらいだし」
 ニッコリ微笑んで言われる。
「お祭り騒ぎねぇ……」
 そう言えばなんでも許されると思ってないか?
「パンフ買いに行こー、DVD付きのやつー」
 弾むような足取りで階段を上って行くマオを見る。拾った頃はあんなんじゃなかったのに、気づいたらヒーローオタクをこじらせてた。楽しそうだからいいかが。
「勝手に行くなよ」
 苦笑して声をかけると、隆二もあとを追った。


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サークル名:人生は緑色(URL
執筆者名:小高まあな

一言アピール
鳥と怪異と特撮ヒーローが大好きな通称、鳥散歩の人です!今回は秋の変身ヒーローヒロイン祭りもやります。新刊は本作のディレクターズカット版の予定。リーガルユカナとメタリッカーの本編もきっとあるはず。疑心暗鬼ミチコたちは、特オタのマオが主人公の「ひとでなしの二人組」の作中作です。詳しくはwebカタログで!

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