海の日

今日は海の日。祝日だ。
とある町の歓楽街。飲み屋通りは夜が更けても賑わっている。
二人の男性がテーブルで向かい合わせに飲んでいる。大分出来上がっているようだ。
「しかし三連休は早いな。イベントも終わって、もう明日から世間は仕事か」
「おい、折角気持ちよくなってるんだから思い出させるなよ」
 連れの男にジョッキで突っつかれた相手の男は、わざとらしくアチャーとのけぞる。
「悪い悪い、現実に戻してしまったねえ」
「むかつくわー。ほんとむかつくわー」
 そう言う男は言葉とは裏腹に、楽しそうな顔でジョッキを飲み干す。
「そういやさ、昔って七月に祝日はなかったらしいよな」
「今日は、海の日だっけか。けっこう新しいんだよな」
「みんな休むのが下手だから、国が無理矢理増やしたんだろ。どうなんだろなあ」
「まあそのおかげで今こうして飲んでいるわけだから、素直に喜ぶべ。祝日にかんぱーい」
「かんぱーい。そういえばお前、来週の休みって空いてるか?」
「来週って、金土日の連休か?まあ空いてるよ」
「そんじゃ草野球手伝ってくれ。人が足りないんだ」
「別にいいぜ。そういやあ来週って何の日だっけ。風の日?」
「来週は空の日だろ。風の日は八月最初の月曜だろ」
「そうだっけか。じゃあ土の日っていつだっけ
「ええと土の日は六月の第二月曜だな。つーか自分で調べろよ」
「まあついでついで。しっかし、祝日が増えたよなー」
「あと川の日が八月最後の月曜だろ。他にはと…」
「海、山、川、土、風、空、森、水、炎、氷、雨、雪、島、まだあったっけ?」
「どうだっけなあ。連休に合わせて滅茶苦茶増えたから、それ以上は覚えてないよ」
 二人はうーん、と腕を組んで考え込んだが、酔っぱらった頭ではそれ以上思い出せず、諦めてまたジョッキを手に持った。
「あ、そうだ。お前今年のプラチナお盆はどうするんだ?丸一週間あるだろ、また甲子園観戦か?」
「いや今年は海外に行くつもり。コミケ前には帰ってくるさ」
「それなら九月のシルバーウィークで行けばいいじゃん」
「そっちは国内旅行に使うから」
「楽しみが多くていいな。俺はまだ考えてないや」
「おいおい、今からそんな予定で大丈夫か?その後の一〇月にもダイヤウィーク、と一一月のパールウィークが控えているぜ。年間でしっかり予定建てないと、無駄に過ごすことになるぞお」
「うるせえな、ゆっくり考えるさ」
「そう言ってて、今年の三月のブロンズウイークだって、一週間何もせずにぐーたら過ごしていたじゃないか。休みは遊ばなきゃ勿体ないし、経済が回らないぜ」
「それにしたって、お前は遊び過ぎだ!」
はははは、と二人はお互い笑う。
「そういやさ、来年も連休が増えるってニュースでやってたな」
「今度は二月ごろらしいぜ。名前はサファイヤウィークにするとか」
「あ、それ聞いたわ。さらに六月にも新しく祝日作ってルビーウィークだとよ。ああ~今から楽しみだぜ~」
「お前、そんなに遊び過ぎて良く金が持つよな。今だってこうして飲んでいるわけだし」
「そこはそれ、そのために日々倹約しているのさ。俺様、オンとオフでがっつり切り替えるタイプなのさ」
「それって、平常時は経済回してなくね?」
「う、そ、それはそれだ。使うときにガツンと使えばいいのだ!」
「ま、お前の言う通り休みは有効に使わなきゃだからな。俺もたまには旅行でも計画してみるさ」
「お、それなら一緒に海外どうだ?近くなら移動も楽だし、絶対楽しいぜ」
「そうだな、たまには海外もいいか。それじゃあ計画は任すわ。俺海外詳しくないし」
「任せときな!楽しい連休になりそうだぜ!」
 二人はまた大笑いしながら、またジョッキを飲み干した。
 
 昔、多くの人々が働き者で有名な国があった。しかしある時から、人々は休みを欲しがった。国は応え、休みを増やした。それでも人々は満足しなかった。
 国は応え続けた。人々は満足しない。国の経済が傾こうとも、多くの会社が潰れようとも、人々は休みを求めた。休むことの楽しみを知った人々は、もはや以前のように働くことはできなくなっていた。
これからも休みは増え続けるだろう。そのうち、一年の半分は休みになるだろう。いや、もしかするともっと増えるかもしれない。それでも、そこまでしても、満足するかはわからない。人の欲は、どこまでもとめどないものなのだから。

「よっしゃー遊びまくるぞおおおお」
「俺だって今年は遊んでやるぞおおおお」

 ……いや、二人のように素直に受け入れたほうが、世の中平和だし、人生も楽しいのかもしれない。誰だって嬉しいよね、休みが増えるの。
 さてさて、お次は何の日が増えるのか、楽しみにしましょうか。
それでは皆さま、変わらぬ平日を、そして良き週末を、命尽きるまでお楽しみください。
いつかまた別の祝日まで、さよなら、さよなら。


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サークル名:城東ぱらどっくす(URL
執筆者名:病氏

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