ど素人お洋服談義


<作品紹介>
 日が沈んだ後の、しんと静かな部屋の中で、姉の紗依子が手首を切っている。
電灯もつけずに机に向かい、かみそりを肌に当てる。動きを止めているように見える指先にはちゃんと力が込められていて、刃先が少しだけ肉に入る。赤い血の玉がぷくりと膨れ、音もなくはじけた。
液体はさらさらと皮膚の上を流れてゆく。紗依子はそれを楽しげに眺めている。
口元に浮かんだ小さな微笑みを、僕は黙って、見つめる。
(柳田のり子「薄紅の家、素晴らしき世界」より)

 関東地方のM市の路上で、夜中に歩いている若い女性が刺されたり、腕を傷つけられたりしている事件があるだろう。
あの犯人は私だ。
夜中にニットキャップをかぶり、口の中にガムを放り込んで自転車で出かける。
自転車を漕ぎながら歌う歌は「おお牧場はみどり」。
何故かいつもこれだ。
(よいこぐま「くまさん」より)

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