ミス・アンダーソンの安穏なる日々

魔法をもつ魔族ともたぬ人間が闘争を繰り広げる世界。

由緒正しい騎士執事の血統である魔族の少年・アーティは
いきなり一人前になった途端、ある使命を言い渡される。
それは人類最強の女傭兵、アンナ=L・アンダーソンの抹殺だった。

《血だまりを逍遥する淑女》《死の雨を呼ぶ碧眼》
《戦場に靡く黒髪》《魔族殺しのアンダーソン》――

数々の物騒な二つ名を所持する彼女相手に
アーティはどう立ち向かうのか?

あんまり殺伐としないおねショタファンタジー、ここに開幕!
(サークルサイトより転載)

sanka

この物語は、魔法を使える「魔族」と魔法を使えない「人間」が敵対している世界において、
こともあろうに人類最強の女傭兵であるミス・アンダーソンの殺害を命じられてしまった、
戦闘能力皆無・家事能力一級品の魔族の少年アーティが必死に頑張るお話なのですが。

とにかく主人公のアーティくんがかわいいのです……!
見かけの可愛さ(羊角! 羊耳!)もさることながら、とにかくその挙動の全てがかわいい。
敵であるはずのミス・アンダーソンの家にたどり着いた途端、
その家のとっちらかりっぷりに我慢ができなくなって片づけを始めてしまったり、
ミス・アンダーソン抹殺のために怪しげな本を見ながらトラップを仕掛けてみたり、
そのちょっと斜め方向にすっ飛んでる頑張りの方向性がほのぼのします。

そんなアーティに対する人類最強・ミス・アンダーソン(29)の対応がもう気持ち良いほどで。
まあミス・アンダーソン、本当に最強でアーティに対しても余裕なんですが、とにかく私生活がずぼらすぎて笑えます。っていうかぬいぐるみないと寝られないとかどういうことなのミス・アンダーソン。アーティぎゅっとするのうらやましいんですけど。
すごく淑女然とした態度を取りながら、時々取り繕いきれてないあたりがかわいらしいです。

読んでいるこちらまでアーティと一緒に「どうしてこうなった……」となりつつも、そんな日々を通して、最初はただミス・アンダーソンに恐怖していただけのアーティが、ミス・アンダーソンとの生活を通して彼女を少しずつ理解していき、「彼女にとっての平穏」の基礎になっていく過程がすごく胸キュンなのです。

そんな二人の、何だか不思議な共同生活と、立ち込める暗雲。
徐々に明らかになってくる魔族の暗躍、謎めいた男の存在、徐々に緊張感を増していく空気、ちらついてくるミス・アンダーソンとその周辺の背景……。
展開していく物語にわくわくすると同時に、どうしても「この二人の平穏がずっと続いてほしい!」と思わずにはいられませんでした。
でも、そんな恐ろしい事件と事件に相対するミス・アンダーソンの姿を通して、自分のあるべき場所や役割を見出していくアーティの姿に胸が熱くなります。
そう、何となくアーティの行動や考えを追いかけていると、「頑張れアーティ!」って応援したくなるんですよね。純粋に。何となく保護者のような気分になりますね。

また、同人誌版には「アーティ3分クッキング」が載ってまして、
物語中の料理のアーティによるレシピなのですが、
こちらがまたすごくかわいいのです……。
何がかわいいって途中で必ず一回は邪魔するミス・アンダーソンが(そっちか)
作ってるそばから全部食べられてた時のアーティのすごい顔を想像しただけでにやにやします。

何か「かわいい」しか言ってなくてすみません。
でも本当にアーティもミス・アンダーソンもかわいいんだから仕方ないですよね……。
最初から最後まで夢中になって読んでしまいました、楽しかったです!
まだまだ謎の部分は多いのですが、続編が今年の秋から公開されるようなので、今からとても楽しみです。


発行:こんぽた。
判型:A5 186P 
頒布価格:600円
サイト:こんぽた。
レビュワー:青波零也

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