2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ゆきにねむる 雪にうずもれたこの地より遥かかなた、南の海に連なる小さな島々の中でも有人島としてはもっとも小さなとある島から手紙を受け取ったのは、冬眠時期も残りわずかな冬の終わりのことだった。 ポストに重なっている封筒のうち四通は兄か […]
2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 隠れ姫の恐怖症 「お誕生日プレゼントです」 そう言って渡されたものを受け取って、少女――メディアは困惑を隠しきれなかった。 プレゼントらしく丁寧な包装も施されず、しかも蓋を開けて中身を見せた状態で渡された文箱。そこに、水色の同じ紙で統一 […]
2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 前略、額の中より その絵には《恋文を読む女》の題がつけられていた。 一糸まとわぬ姿でソファに横たわる女が片手に便箋を持ち、気だるげにそれを眺めている。シンプルな構図と控えめな色彩が小さなカンバスに収まった一枚は、壁に並ぶ作品群の中では間 […]
2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 フォゲミノ・フォゲミナ 君の愛してやまないものを、決して好きにはなれなかった。 あの冬の静かな朝も、夏のけだるい夜も。巧拙もよくわからない、詩人も画家も音楽家も。 夜明けの海が綺麗だからと、君はよく深夜に家を抜け出した。相棒の一眼レフを胸に […]
2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 恋をしています 猫屋奇譚 「恋をしています」 喫茶店猫屋店主であり陰陽師である橘。物の怪に時には亡者からの依頼を引き受ける。日常の中の非日常空間の奇譚 登場人物橘 陰陽師、喫茶店猫屋店主 晴 鬼、猫屋従業員 翔太 依頼人 […]
2020年12月21日 / 最終更新日時 : 2020年12月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 二月の便り つら、と一枚便箋が降ってきた。 雪だとまがうほど白い便箋であったので、僕は手で差し止めることすら思いつかずそれがつるりと僕の頭をなでて路面へ落ちていくのを目で追った。息の濁るような冬の停車場から貨物鉄道が遠ざかっていくば […]
2020年12月21日 / 最終更新日時 : 2020年12月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 手紙食べるマン 先客がいた。 男はおもむろに和田さんのポストを覗いている。白昼堂々と何をやってるんだこいつは。なので私は容赦なく背後から男の頭を鈍器のようなもので殴りつけた。ゴツン、と鈍い音がする。「この不審者! か弱い独居老人に何を […]
2020年12月21日 / 最終更新日時 : 2020年12月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ドンキー・ポストマン 世間がどう思っているかは知らないが、私立探偵なんて商売は、決して華やかなものじゃ無い。 ありきたりで、つまらなくて、そして胸くそが悪くなるような話ばかりだ。 「こんにちは」 春の陽だまりのような笑顔で事務所に入ってきた […]
2020年12月21日 / 最終更新日時 : 2020年12月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 パンドラ 机の中に手紙が入ってたらその人は呪われちゃうんだって、死んだ須藤恵那すどうえなの呪いなんだって、クラスのみんなはそう噂した。 封のされてない封筒の中に、ちぎったノートが一枚だけ入ってる。だけどそこには何も書かれていない […]
2020年12月21日 / 最終更新日時 : 2020年12月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 星の詩 星になる君へ、君の特別な時間はきっと誰よりも温かい色をしているのだろう冷え切った時間に触れ続けた指先に寂しさが灯るなら君の星はとても優しくて温かい 私の望みは美しい満天ではなく夜空を見上げながら君の星について語る姿なのだ […]