2020年12月6日 / 最終更新日時 : 2020年12月5日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 裏技 レンから葉書が届いた。 繊細なタッチで描かれた風景画に、「宿帳にこの宛名の住所と、タナの名前を書きます」 と短く添えてあった。 よし、裏技成功。 本名を知られることは回避できた。 住所は正しいが、宛名として書かれている […]
2020年11月5日 / 最終更新日時 : 2020年11月3日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 犯人は二人 「手紙を一通、取り戻して欲しい」 男は入ってくるなり、勧められもしないうちから、手前のソファに身を沈めた。 満潮音みしおね純はそれを咎めもせずに、「総務省政務官の、大野秀文様とお見受けしますが」「そうだ」「選挙の関係です […]
2019年8月22日 / 最終更新日時 : 2019年8月21日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 夢に棲む。 #01 ろくな夢をみない。 現実に近い悪夢で、ほとんどは遅刻の夢だ。 何かに間に合わない。 そこまで時間に追われてることなんてないだろう、という時も、細かい気がかりが夢に出てきて、目が覚めてから、「なんて安易な」とガ […]
2019年1月16日 / 最終更新日時 : 2019年1月15日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 瀕死の探偵 「満潮音みしおね。起きてるか」 門馬知恵蔵は一瞬、眩しさに目を細めた。 隅から隅まで純白の病室。横になっている満潮音純の寝間着までもだ。 弱々しい声が応える。 「意識はあるよ。話もできる」 年齢を超越した美貌が、 […]
2019年1月6日 / 最終更新日時 : 2019年1月5日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 剣の花束 1. 退社時刻が近づいていた。 大きな花束をぼんやり眺める。 春らしい、うすももいろのカーネーション。 会社をやめた娘が「お世話になりました」と持ってきたのだ。 MJBの空缶に水をはり、むぞうさに投げ入れた。 […]
2018年5月4日 / 最終更新日時 : 2018年5月4日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 美少年興信所・第三話「倉の中」抄 その土曜の午後、鷹臣はいつも乗る車両の停車位置までホームを歩いていった。予備校の秋の強化合宿の日で、校舎に一泊することになっていた。肩にしょったリュックには、教材の他に弁当と着替えが入っている。 「あ、平田……」 ベ […]
2017年8月20日 / 最終更新日時 : 2017年8月19日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 バシア・バスイールは泳げない 弟のマリクは日本人の恋人に誘われて、近所の秋祭りに出かけていった。「バシアさんも行きませんか」と声をかけられたが、「二人でどうぞ、ごゆっくり」と送り出した。 窓を開けると、にぎやかなお囃子の音が聞こえてくる。マリクは […]
2017年1月14日 / 最終更新日時 : 2017年1月13日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 いえない言葉 「帰れよ!」 あの時の安道の泣きそうな顔――なのに、何も言わずに帰った。 ごめん、とも、さよなら、とも言わずに。 《あいつは嘘はつかない。けど、本当のことも言わないんだ。いつだって。だからもう、どうでもいい》 だが […]
2016年9月5日 / 最終更新日時 : 2016年9月5日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 「指輪」抄 「疲れたなあ。ここのところ稼働率が低いから、仕事の量が調節できると思ってたけど、甘かったよ」 妻の沙織が並べてくれた夕食を食べ、ひとごこちついた瞬間、湯瀬ゆぜ真二は、ため息をついてしまった。 沙織は可愛らしく微笑んだ […]