綴命記


樹翁大陸の東の果て、瑠璃の里。
里を治める如月家の、その次男は昼行灯と呼ばれていた。
尽きぬ悪い噂に、里の民は眉を顰める。
だが、その噂は果たして真か?
和風活劇譚。 ※若干の暴力・流血表現を含みます。(サイト「階」より転載)

大雑把には、瑠璃の昼行灯と家族哲学の2篇からなっている小説。
1話瑠璃の昼行灯、2話家族哲学、3話以降サイト連載という感じのようです。

一言で表すと「めっちゃ面白かった!」です。
一気読みしてしまいました。
悠一に、悠一にとことん騙されてしまいましたよ!
登場した時点で「あ、こいつ裏がある」と思ったのですが。
その裏がなんなのか分からないまま、話が緊迫するにつれ、「あれ……? こいつ……?」と思い始め。
紫呉と悠一が庵で対峙したところで、「あー! あー! やっぱりだよ! もう! 騙されたよ!」となりました。
紗雪の心の揺れとズドン、とする成長(ただし、ブレはしない)と、それによって、悠一に裏があるのかないのか、私も揺れてしまいましたよ……!
とにかく何重にも騙されます。もう、ホントに騙されます。
この私のイイ感じの騙され感は、ひとえにろくさんの卓越した文章力によるものです。とんでもないテクニック。
そして家族哲学に入り、カッコよさに酔いしれました。
もう、先が分からないのは予想できた、というより思い知ったので、スピード感を持って拝見しました。
桐子の落ち着き先は、ハッピーではないけれど、良いエンドという終わり方で、読後感がとても良かったです。

同作者の別の同人誌「鵺が来たりて」でも感じたのですが、アクション描写がとことんカッコいい!
黒器の設定もとてもすんなり入って来て、嗚呼、とても素敵。
世界観も大変魅力的でした、和風なティストだけど、日本とは明らかに違う瑠璃の里。如月がどういうものか、というのも大変納得させられました。
 
和風ファンタジーがお好きな方に、是非読んで頂きたい1冊です。


発行:階亭
判型:新書版 252P
頒布価格:500円
サイト:
レビュワー:浮草堂美奈