ファントム・ペイン


ジェフリー=クロウズ・シリーズ第1巻
私立探偵「ジェフリー=クロウズ」が、様々な事件を、時にシリアスに、時にコミカルに解決していく、ハードボイルド風作品です。
シリーズ物の形式を取ってはいますが、一話完結スタイルなので、一冊だけででもお楽しみいただけると思います。
第1話ファントム・ペイン
 クロウズが引き受けた依頼、それは「マリア=アークライト」なる女性を捜し出して欲しい、と言うものだった。
 マリアを捜し出したクロウズは、彼女が「心」を持つアンドロイドである事を知り、彼女のささやかな願い「海を見たい」をかなえる為、行動を共にする。
 だが、マリアを狙う別の男達が現れて………
第2話ランニング・ホイール
 クロウズの下に、旧知の友人、リサ=イヴンハートが訪ねて来た。
 彼女の依頼とは、テロリスト、ベルナルド=モートンの捜索。
 一度はその依頼を突っぱねたクロウズだったが、リサの口からその理由を聞き、引き受ける事にする。
 リサがモートンを捜す理由、それは彼女の亡き夫と子供の、復讐だった…。 
第3話フリー・ハンド
 〈リッパー〉、それは市街を騒がせている、連続殺人犯に付けられたあだ名だった。
 アルフレッド=マコーウェル警部に依頼され、〈リッパー〉の捜査をする事となったクロウズ。
 やがて、捜査を進めていく内にクロウズは、事件が、そして何より〈リッパー〉が自らに深い関わりを持つ事を知る。
 果たして、〈リッパー〉とは?
第4話ヘヴンズ・ラダー
 最近、市街にはあるドラッグが流行していた。その名は「ヘヴンズ・ラダー」。
 母親がヘヴンズ・ラダーによって昏睡状態になってしまった少女、サラの依頼をクロウズは引き受ける。
 パパに会いたい、と言う小さな願いを。
 報酬は、コイン1枚、1クレジット。
(サイト煉瓦壁より転載)

素晴らしいハードボイルドでした!
 なんと申しますか「いかにも」な雰囲気がとても良くて、一気読みしてしまいました。
「ファントム・ペイン」から、「メイド・ウェア」(閑話休題的話)への流れで、マリアに救いがあったように感じられました。

 と、書いておいてから―なのですけれど個人的に一番好きなのは「フリー・ハンド」です。
 (フィクション限定で)殺人鬼が大好きなんです! 特に、リッパーのような愛故に狂った殺人鬼が! 同好の士はいらっしゃるはずです! そして、「フリー・ハンド」をご覧になって大きく頷かれるはずです!
 最後のシーンで、逆に後味良く「フリー・ハンド」を読み終えました。

 ヘヴンズ・ラダーを「どうなるんだろう」「どうなるんだろう」とワクワクしながら読み終え、今、とてもいい気持ちです。
 無償奉仕はしないというジェフェリーのポリシーが、金銭を得る事によって責任が生ずる=プライドも生ずると受け取れて、カッコいい!

 ところどころに入る銃撃戦薀蓄も非常にテンションが上がりました。リサの長い右肩とか、オートマティックをホルスターから抜いた時の「オートか…」とガッカリしているジェフリーとか、完全にツボでした。
 そして、食べ物が美味しそう! いや、マリアやソフィアの作るものは別にして。出てくる料理が美味しそうで、ダイエット中の身はなかなかに辛かったです。

「こいつあハードボイルドだ!」という小説がお好きな方に、是非ご覧になって戴きたい1冊です。


発行:POINT-ZERO
判型:A5 352P
頒布価格:
サイト:煉瓦壁
レビュワー:浮草堂美奈