「僕達のグループは狂っている。それは僕達皆が知っている事実だろう?」
かつては優秀な生徒達が集まっていた魔法学園α・ミーミル学園。だが今、そこは少し前に起きたとある「事件」によって崩壊し、孤立していた。崩壊後の学園で生き残りをかけて戦う子供達のお話。
どうしても気になっていることを調べる為に危険な区域となっている校舎に忍び込むジェイミー・アンソニー。そこで彼女はとあるものを見つけるが……。
さらにその間、彼女が暮らす寮内では、事件が起きていて……。
(サークルサイトより)
chapter phoenixに続く、『楽園の子供達』シリーズ第二弾。
前回に引き続き表紙の美しさが目を引きます。
表紙は黒一色刷り+青の箔押しなのですが、この箔押しの使い方がとてもお洒落です。
今回は、閉ざされた世界に生きる少年少女たちの生活や思い、また魔法のあり方などに切り込んだ話でした。
その中で、実は生徒たちの中でも持っている情報が違っていたり、全ての原因となった事件のきっかけがあやふやであることが前回よりも明確に示されていて、謎と疑念が深まっていきます。
それらの情報があってこそ、今回提示される「重要なこと」が、本当に一つの重要な情報として頭の中に飛び込んでくるわけなのですが。あの台詞には、ジェイミーならずとも背筋がひやりとしました。
内容としては、前回語られなかった水のグループのお話。
研究者気質の少女ジェイミーの視点を中心とした「表」、そしてchapter phoenixにも登場したカインの視点を中心とした「裏」の二本立て。
これがまたぞくっとするくらい、上手い作りになっております。まさしく、表裏一体、という言葉が相応しいのです。
表で出てきた要素や彼女が目にしてきた出来事が、裏で発生した一つの事件を通して、最後の二ページに収束していく過程に唸らされました。
美しいもの。輝いて見えるもの。カインにとってのジェイミー。それを「守ろう」とするカインの決断。
「僕達のグループは狂っている。それは僕達皆が知っている事実だろう?」……そう言い放つ、水のグループリーダー・フレデリックの底の見えない雰囲気、息継ぎも許されない気配が、この物語全体を包み込んでいる気がしました。
答えを探し求めながら、踏み入れればそれだけ闇が深まるような。
そんな中で、静かにもがく彼らの、見えない未来に思いを馳せずにはいられません。
これから先も続いていくであろう物語が、とても楽しみです。
発行:秋水
判型:A5 68P
頒布価格:300円
サイト:秋水
レビュワー:青波零也