季刊 枯片吟


「6編の名言集」を掲げる6つの純文学掌編集。

 本書は六編の物語を収録していますが、どれも手軽に読める長さです。それでいて独特の世界観が詰まっていて、本格的な純文学掌編集だと思いました。
 作者の片岸さんの文章の特徴としては、一文が長いように思います。だからそれがイイ意味でクドイ(褒めてる!)。その文章がまた都会独特の倦怠感を描くのにとても効いている気がするのです。水道水のまずさとか、ぬるい麦茶とかああいう雰囲気の都会のダルさ……これは本当に巧い。
 ご自身で「6編の名言集」と評されているだけあって、詩的な一葉一葉なのも魅力的です。
装丁もシンプルですが読みやすくてとても良いです。基礎の技術で勝負してくるゴマカシのない作品だったように思います。


発行:季刊 枯片吟
判型:文庫 70P 
頒布価格:300円
サイト:季刊 枯片吟公式ブログ~先天的失言者~

レビュワー:唐橋史