水の都 アクアポリス


水の都アクアポリス。その地には『水龍伝説』が語り継がれていた。
幼馴染であった三人の男女は運命に飲まれ、また街をも巻き込み起こった≪最高神官裁きの戦い≫。
リモールは本当にエミナージオからソリナを奪ったのか。
婚約者であるエミナージオを捨て何故ソリナはリモールを選んだか。
ソリナへの愛に狂ったエミナージオの姿は真実であったか。
ここで語られるは五百年前の偽りなき真実。幻のない過去。
(裏表紙より転載)

水の都アクアポリスで起こった悲劇を描いたファンタジーです。結末はわかっているはずなのに、最後まで一気に読み進めてしまいました。
丁寧な筆致で描かれた白い町並み、水の魔術の描写が美しいです。そして水の都で暮らす人々の生活感が、何気ないやりとりからも滲み出てきます。
「どんなに自分の師が一番優れているか激論」を交わす弟子たちが微笑ましいですね。
そんな幸せで温かな彼らの生活に徐々に不穏が忍び寄ってくるところが、もの悲しくもあり、この話の見所でもあります。些細なすれ違いや不運が重なり悲劇へと繋がっていく様には、「どうして」とつい漏らしたくなります。不器用な愛に溢れた彼らを、愚かだとは言えません。最後の一文が胸にしみますね。
またじっくり味わいたくなる、素敵な物語でした。


発行:あの時、あの子と、あの場所で、
判型:新書版 188P
頒布価格:1000円
サイト:あの時、あの子と、あの場所で、

レビュワー:藍間真珠