プラネット・カラーズ 1


大地はいつしか穏やかに冷え、命は全て静かに腐り落ちようとしていた。
幾億の命を抱えて、惑星は死に誘われる。
それは神々の定めた、避けられぬ摂理であったはずだ。

――でもここに、逆らう神がひとりいる。
遠い約束を守るため、愛した大地を守るため。
神々の見捨てた地でその翼をはためかせ、惑星を救おうとする神がいる。

指揮杖は振られ、旗は掲げられ、行進は始まった。
(サークルブログより転載)

「小さき神と少年の、星を救う「行進」の物語」、と銘打たれたお話。
一度の滅びを迎え、〈腐れ渦〉と呼ばれる現象によって完全なる滅びに向かいつつある惑星に降り立った、少女の姿をした神――「千年ツグミ」マシェルと、「千年ツグミ」を描いた旗を掲げる「戦旗の守護者」たる少年クロの、「惑星再生」の旅を描く物語です。

本を開くと、まず滅び行く世界の絶望感に震えが走ります。
どこまでも広がる荒野、かつての文明の名残を残す品々……交通標識には思わず笑みをこぼしてしまいましたが。
とにかく、地に根付いた古い神ですらその滅びに身を委ねてしまうほどの、圧倒的な滅びのイメージが余すところなく描かれています。
そこにはもはや、人も神もなく。ただ、何もかもが腐り落ちていく未来だけしか見えない。

だからこそ、指揮杖を振りかざすマシェルと戦旗を掲げるクロ、そしてマシェルが率いる「軍勢」による行進が、鮮やかに目に焼きつくのかもしれません。
彼女たちの「行進」は、腐った大地や命を浄化し、再生させるためのもの。
そのために、マシェルは凛と声を張り上げ、指揮杖を振るうのです。
他の誰がその行進を支えてくれるわけでもない。それでも、マシェルは守護者クロと共に行進を続けていく。大切なものを少しずつ失いながらも、マシェルは前に進むのをやめないのです。
その真っ直ぐさが、読んでいるこちらの胸まで締め付けてやみません。
老いた神、珊瑚の王スラズ・マリーツァの前で見せた、一つの再生の風景。それはまだほんの小さな芽吹きでしかないけれど、彼女が目指す色鮮やかな世界の一端を見せ付けられて、自然と涙がこぼれました。

そして、そんなマシェルに寄り添うクロのあたたかさも忘れてはなりません。
突っ走りがちなマシェルの首根っこを掴み、時には一緒に走り、彼女の体を支えて立つ守護者。
マシェルだけでは決してなしえない行進。だからといって、クロ一人がいても意味が無い。
指揮棒杖と戦旗、二つで一つ。その繋がりを感じさせるやり取りがとてもよいのです。

あと、いちいち「小さい」って言葉に反応するマシェルがとても可愛いです。
言ってないのに反応するところとか、とても愛しくなります。

旅の中、謎めいた少女アーヤと出会い、少しだけ賑やかになったりもして。
その時のマシェルの反応もまたすごく可愛らしかったりするのですが。
果たして、この行進が、一体どのような結末を迎えるのか。
とても続きが気になる一冊でした。


発行:デンタルカーオブソサイエティ
判型:B5(ページ数不明) 
頒布価格:不明
サイト:デンタルカーオブソサイエティー公式ブログ

レビュワー:青波零也