少女○○して ここより先、春。


道がある。何処までも続くと思われる、まっすぐな道だ。その中腹あたりを境として彼方を風花、此方を桜吹雪の舞う一本の道を(こんなにも晴れた日だというのに)こちらへと歩いてきた少女がセーターを脱ぎ捨てて、今年最初の桜を踏みしめる。

散文詩でありショートコントであり短詩形であり何者にもならなかった
(なれなかった)私、或いはもしかしたらあなたのような掌篇。

(文フリWEBカタログより転載)

清風さんて読む人の世界を動かして別の場所に変える力があるのではなかろーか。断片的なんだけどトータルで見ると一個の世界。繋がってるようなないような、どこにでもある、どこにもない世界。短いのにしっかり読後の充足感。清風さんとは逆に読む人の中にまで来てその人を変えるような文章を書く人もいる。そういうのを読むと「これがあるから俺書かなくていいじゃん」てなってそれにだけ浸りたくなるんだけど、これはそうじゃなくて適度な距離をあけてくれるのがいいと思った。
「トキシン」にあったものと比べると僕はこういう散文ぽいほうが好きだなぁ。毒の効いたユーモアよりも、美しい毒のほうが読んでいて心地よいです。


発行:文学結社猫
判型:文庫 
頒布価格:100円
サイト:文学結社猫
レビュワー:添嶋譲