シタルキア創国記序章 自由の翼 


異母兄アスファーンによって追い詰められ、虐げられる王子エルシアン。愛していると嘘を重ねながら彼を翻弄するアスファーン。二人の間に横たわる、愛と憎悪が運命の輪をまわす。大河長編・異世界架空歴史物語。
(著作者様サイトより)

あまり馴染みのないジャンルの為、読むのに時間が掛かってしまいました。
レビューをさせて頂くこの作品には本編があり、前日譚と言える内容となっています。
主人公エルシアンの敬愛する兄アスファーン王太子の、主人公に対する豹変とそれに苦悩する様子が暗く耽美的な内容で展開されていきます。
重厚かつ綿密な世界設定と、著者の知性を感じさせる丁寧な文章は、読み始めてすぐにわかりました。作中内にある王家での生活や執務の様子など、その説得力ある描写はちょっとしたリサーチでは叶わない事を伺わせます。
サブタイトル『自由の翼』が皮肉に思えるような仕打ち、そこからの脱却が叶わない姿に、優しげで繊細な主人公に感情移入してしまいます。
思わぬ形で『自由の翼』を得る主人公ですが、作中で起こった一連の出来事は、自由を謳歌する主人公に長く暗い影を落とすことになるだろう、そんな予感を感じさせるラストでした。
しっかりした装丁と内容の濃さは、とても無料配布本とは思えません。もし手元にあり未読なのであれば、一度読んでみる事をお勧めします!

男子の意見としてはいくつかのシーンで「そこはボデーに一発入れるトコだろ」という、プロレスを野次るオヤジ的感想もちょっと抱きましたが、あまりにも野暮すぎる為割愛させてください。


発行:ショボ~ン書房
判型:A5 76P
頒布価格:無料配布
サイト:ショボ~ン書房
レビュワー:武田山木下