鳳凰の剣


現代日本に暗躍する魑魅魍魎を倒すことで生きる男、冬木三十狼。フリーランスで戦う彼も、過去には国家組織という大樹に寄って戦っていた過去を持つ。
そんな男が、常連の『仕事』の請負先から一人の少女を任せられることになる。彼女の名は美剣鳳子。素手で魍魎を浄化させる彼女の持つ力とは? そして彼女がするべき戦いとは?
彼女を中心に巻き起こる、新たな敵『男爵』との戦いの中で、三十狼は少女の存在の秘密と己が闘う理由を見出していく。

AGJスタジオがお贈りする、現代を舞台にした長編伝奇小説。

(HPより転載)

最近のこの著者の方の本はライト層狙いの為か、読みやすくコミカルな部分が多いのが特徴だと思いますが、
かつては「娼婦たちの騎士」のような重厚で骨太なファンタジーも描いていたので、
好きな本が分かれるのではないか、と私は思っています。
とはいえ、2013年頒布の「ステルスセブン」も設定を深く作りこんでいる事をキャラの会話などからひしひし感じられるので、物語が軽いとは思えないはずですが。

ともあれ、その中間・・・・・・どの層にも私がオススメと言えるのが「鳳凰の剣」です。

この物語は熱い! とにかくアツイ。
妖怪退治屋の主人公の三十狼は、表紙のいかつい出で立ちや開幕でハードボイルドな印象を受けてしまいがちですが、
ヒロインの鳳子とボケ突っ込みやったり、意外にうっかり者だったり、間が悪かったりと親しみやすい面も多いです。
そして何よりも決めるときは決める。まさにこれこそ主人公。王道最高。

で、この作品の良いところは、上記のように、「設定重厚」ながら「読みやすい」点です。
たとえば三十狼が使う武器。銃と呪術がメインウエポンですが、この作品のタイトルにもあるように、
最終的には剣も使います。その一つ一つや敵の存在・親玉の正体などの設定に引用があるなど、
作り込みは十分。しかしその辺り理解するのが難しいと感じるなら大雑把に読んでも話の理解に不都合が生じないように配慮されています。
そのあたりの案配が実に上手い。
軽くさっとも読めるし腰を据えてじっくり読んでも楽しめる。
そして最後は勿論大団円!
この完成度は王道バトル好きなら読まなければ損と言えるほど。


発行:AGJスタジオ
判型:B5 168P 
頒布価格:不明
サイト:AGJスタジオ
レビュワー:こくまろ