甘味組曲 Extra Sweets Remix


「おかえりなさい、アキさん!」
お菓子が大好きな男アキと、そんなアキの作るお菓子が大好きな女ナツ。
二人の日々は、いつだって甘く、柔らかく、そしてあたたかい。
とあるカップルの、幸せについての物語。
※作者サイトより転載

私はウイスキー・ボンボンもリカー・ショコラもちょっと苦手でね。

ゴディバやモロゾフ、色とりどりのショコラアソートは、眺めているだけで幸せな気持ちになるものだが、この中に例の苦いヤツが混じっていたらと思うと、やはり少し食指を躊躇うわけだ。

表紙イラストや売り文句に、甘々ベタベタのラブコメディを期待しながら、あらゆるスイーツの名を冠した章をとんとんと食べ進めて行く。
プリンにアップルパイにジェリー・ビーンズ。
ひと組の恋人たちが描く幸せな情景に乗って、欲したその通りの甘味がやってくる。
良かった、大丈夫だ。甘い。

時折ふっと、その甘みに陰りが混じる事がある。
嫉妬であったり、不安であったり。クッキーの端についた小さな焦げにも満たない、小さなもの。
ただそれも、好き合い過ぎる同士の恋人達の物語なら当然あるべきものだろうと、半ば言い聞かせるようにして次のスイーツを手に取る。そしてあえなく甘みにほだされる。
パフェの上にもミントの葉が乗っているものだ。次のひと口をより甘く感じる為のものだろう。
そう信じて余裕ぶって、スイーツの続きを無邪気に楽しんでいく。

でもそれは、大きな間違いでした。
スイーツは完全に囮でした。
ミントの葉どころかトリカブトの根がパフェグラスの底に潜んでました。
本当にすみませんでした。

後書きに『スピンオフ』だと記されたこの掌編を、背景となる物語や設定を全く知らないまま、ひと息に読み終えてしまった。ただ純粋に虚構の甘味を、文字通りまんまと食わされていたわけだ。

リア充or非リア充、元リア充or元非リア充、どんな方にもニヤリとオススメできる、さらりと読める一品。

私はね! ウイスキー・ボンボンもリカー・ショコラも苦手でね!
ちくしょう、苦いよ! ちくしょう! DAMASARETA!


発行:シアワセモノマニア
判型:文庫版 P72
頒布価格:200円
サイト:シアワセモノマニア
レビュワー:トオノキョウジ