背中合わせアンソロジー「アルギエバ」


「背中合わせ」をテーマとしたアンソロジーです。

・「屋上の魔法使い」 秋乃さん
学校を中心とした現代物。
扉越しに背中合わせで会話っていいですよね。青春ですね。
最初は誤字脱字なのかと疑ったあそこがああ繋がるとは思いませんでした。
(ネタバレになるので詳細については語りません。読んでみてください)
爽やかな気持ちになれる、清々しい読後感のお話です。

・「西に鸚鵡、東に鷹」 藤原湾さん
国を巡る動きが垣間見える、中華風な物語。
対照的な二人のやりとりを楽しませていただきました。
ラストまでの流れが好きです。タイトルとあわせて、二度読んでも美味しい物語だと思いました。

・「ギイ・クラレンスの挑戦と失敗」 立田さん
児童書風のファンタジー。するりとその世界に誘われます。
背中合わせの世界というのが、まずときめきました。羊の執事たちとのやりとりが個人的にはツボです。
ギイの試行錯誤も楽しませていただきました。
二人がこれからどんな会話を交わすのか、想像するのも楽しい物語です。

・「茜」 蝶々さん
近未来風なお話。諜報物です。
調査部と諜報課の設定が個人的には好きです。
水澄たちのやりとりに、悲しい結末を感じつつゴロゴロしながら読み進めました。
もの悲しく残酷なのに、不思議と美しく感じられるラストがよいと思いました。

・「トゥリからの手紙」 山田さん
西洋風のファンタジー。
ウスコアの設定が独特で面白いです。こういう個性的な設定は個人的には大好きです。
そしてイハナちゃんが可愛らしい。
最後はほっこりできるお話でした。

・「サテモ散ル散ル花ノ先」 楠園冬樺さん
情緒ある大正物。
五七調の文章はそれだけで雰囲気が違いますね。
ついつい口ずさみたくなります。美しいリズムです。
しかし何よりもラストが……。後書きを見て私は叫びました。
ぜひ声に出して読んでいただきたいお話です。

・「最後の竜が眠る森」 立神勇樹さん
SFファンタジー。
雪に森に機械に失われた技術に竜にと、もろに私の好みの世界観。何度ゴロゴロしたことでしょうか。
「気づいてオブリーオ!」と思いながら読み進めました。
じっくりと味わっていただきたい作品です。

・「ちいさな悪党のはなし」 真空中さん
童話風の物語。
悪党とはどういうことだろうと思って読み進めていったら……。
最後の一文にほっこりさせていただきました。
個人的には、絵本としても読んでみたいと思った作品です。

・「フェアシュプレッヒェン」 恵陽さん
RPG風ファンタジー。
フランツィスカとユーリアの関係性が可愛らしくて好きです。
個人的には、たくましくて前向きなフランツィスカがお気に入りです。
そして主従愛にはニヤニヤさせられました。
読むと元気になれる作品です。

・「あおいそらに」 ひさこさん
音楽をテーマとした現代物。
ラストの演奏のシーンが印象的でした。
きっと木鳥はこれからもっと素敵な曲を弾いていくのでしょう。
前向きになれる、読後感のよい作品です。

・「銀の滴降る降るまわりに」 玉蟲さん
室町時代・蝦夷島を舞台とした作品。
読み終わって清々しい気持ちになれる物語でした。
どんどんと逞しくなっていく乙楠と、アイカリシマのやりとりが好きです。
読むときっと鹿肉が食べたくなること間違いなし!

・「砂に見る夢」 鳥井蒼さん
西洋風ファンタジー。
徐々にすれ違っていった二人の物語は悲しいですが、こうした形で気持ちを確かめることができて幸いだったのでしょうか。
砂漠の情景描写が美しかったです。じっくり読んで欲しいお話。

・「ドリーム IN どり~む」 御剣ひかるさん
現代ファンタジー。
リアル中二(?)の愛らしい生き生きとした楽しいお話です。
愛良ちゃんが可愛らしい。読みながら段々サロメのような気分になりました。
楽しく元気になれる作品です。

・「背中合わせの家」 渋江照彦さん
淡々と進んでいく怪談。
怖い話が苦手な私としては、教授が再び件の家へ行かなかったことが幸いです。
取り返しのつかない事が起きたらと思うと……震えますね。
ある意味では背後注意な作品です。

・「チョコレート・パラノイア」 青波零也さん
現代舞台の事件物。
子犬みたいに可愛い八束の言動に始終ニヤニヤしてました。
南雲との掛け合いも楽しくて好きです。
バレンタインは各国の美味しいチョコレートまで食べられるよい日だと思います!


発行:藍色のモノローグ
判型:B6 404P
頒布価格:1200円
サイト:藍色のモノローグ
レビュワー:藍間真珠