人魚を買った。馬鹿みたいな高額だったけれど、かえって信憑性が増した。持ち帰って水槽に入れた。人魚はまだ小さい。せいぜい十センチくらいしかない。これから私が育てなければならないのだそうだ。私は自分の親指に針を刺し、滲み出た血液を人魚にやる。人魚は水面から顔だけ出して私の指を舐め、それから嬉しそうに尾で水面をぱちゃぱちゃと弾いた。猿みたいな顔だが可愛くないこともない。何よりこの子は私に永遠の若さと命をくれるのだ。今はまだ小さいけれど、もっと大きくなったらその肉は不老長寿の薬となる。私が血を与えて育てることで、私だけの、私にしか効かない薬になる。ああ、早く大きくならないかな。私と人魚の暮らしが始まる。私は仕事をやめる。毎日人魚の観察をする。人魚はもどかしいほどゆっくりゆっくり育つ。売人は爪や髪を与えるのもよいと言った。毎日手入れを欠かさなかった綺麗な爪と髪を、私は惜しげもなく切る。人魚は嬉しそうに食べる。早く早く大きくおなり。私は腕の肉を削いで人魚にやる。成長速度が上がった気がする。人魚が笑う。私は自分の小指を落とす。人魚が期待に満ちた目で私を見るから。大丈夫。この子が不老長寿の薬になればこんな傷すぐに治るもの。私はもっと大きな水槽を買ってくる。お腹すいたと私の人魚が目で訴える。私は大きな刃物を買ってくる。大丈夫。どんな大怪我をしても、この子が不老長寿の薬になれば、この子を食べれば、すぐに治ってしまうもの。私は私の足を切り落とす。美味しい美味しい、私の人魚。