第十一夜【患者の自殺】

「本多先生、斉木美保さんが昨日の診察直後に鉄道自殺してしまったそうです……」
「ああ、そうなんですか。気の毒でしたね」
 態度が露骨にそっけなかったか。まあいい。メンヘラなどという社会のゴミはどんどん死ねばいい。後押しをする俺は有益な存在だ。
 勤務を終えた午後七時、渋滞にイラつきながら俺は踏切を通過しようとした。
 ……ガスン、と言ってエンジンが止まった。
 おいおい、とつぶやきながら俺はスターターを回した。しかし、何の反応もない。
 カンカンカン、という警報の音が鳴り、やがて遮断機が下りた。踏切の真ん中に閉じ込められた俺は、真っ青になって車から飛び出ようとした。
 ……ドアが開かない!
 プアアン、という音と共に電車が近づく……
「本多先生、まさか患者さんと同じ所で……」
「恨みは買いたくないですね。おお怖……」