ネタかぶり

ある年の夏に納涼の一環でホラーのアンソロジー企画を立てて気心の知れた作家から掌編を募った。最初のほうは気にしていなかったが、同じ現象についてまるで示し合わせたかのようなネタがある事に気が付き、●●さんと△△さんと■■さんの共同ネタかぁ、なかなか粋なことを仕掛けるもんだなァ、などとのんきに構えていたのだが、その後××さんと♪♪さん、★★さんがほぼ同じネタを別の切り口で提出してきた時点で背筋がピシリと鳴った。
ちがう。コレ。誰も、示し合わせてなんか、いない。
たまたま、ものすごい確率でネタがかぶっただけ……だ。
そんなこと、誰も信じないだろうけど、参加者の半分以上が偶然同じネタについて書いてしまっただけ、なんだ。
そんなことって……
あるんだろうか?
誰にも訊けず、ぼくはかぶっていたネタを書いたひと達に大幅なリテイクを出して差し替え原稿をもらった。流石に二度目は無かった。手元には、複数の作家が連作で書いたようにしか見えない、ある意味とびっきり怖いおはなしが一本、残った。