一匹狼と子連れ狼の戦い。はたして結末やいかに。
(作者サイトより引用)
小さな小さな手製本に綴られていたのは、憎みあいの物語でした。
山の中で、ただ信念のまま生きていた一匹狼と、連れた仔の為に生きる親狼。
心無い里の人間が、彼らを争いに巻き込んだ事、それが不幸の始まりでした。
ほんの三十ページばかりの、手のひらにも収まるような小さな世界を、憎しみの火が少しずつ燃やし尽くしていく。
言葉少なに淡々と綴られるその様は、焼印を押されるように克明に目に浮かび、心臓を火箸で握られるような感覚を覚えながら、読み進めていきました。
読み聞かせに相応しい柔らかな口調で、「そこには何も残っていません」と言い放ち、その物語は終わりました。
火箸の痕の火傷のように、胸に「やるせなさ」が深く刻まれる、小さく重い戒めの物語でした。
発行:畠山勢子
判型:手製本A7版 本文32P
頒布価格:600円
サイト:畠山勢子・手製本
レビュワー:トオノキョウジ