大河と霧と英雄の船(2)


 地球が真っ黒なチリに覆われ、すべての生き物が青空と太陽を失った時代。人類は有毒な大気と闇を怖れ、〈ドーム〉に引きこもっていた。
 パイロット養成所に通う15歳のタイガの夢は、ドーム間輸送船のパイロット〈トリトランサー〉になること。実技試験を数日後にひかえ、タイガは研修船アルゴ号で特別授業を受けていた。そのコックピットへいきなり不法侵入(?)してきたのは、迷子の子猫と、ずうずうしい青年ミスト。彼らとの出会いから、タイガはだんだん危ない事件に巻きこまれ……!?
 人類の希望をかけた計画〈プロジェクト・P〉を守るため、タイガと船が駆ける! 勇気と希望のパイロット冒険譚。
(サイトより転載)

〈トリトランサー〉を目指すタイガが主人公の、ジュブナイル風SFファンタジーです。
装丁、文字組も「まさにジュブナイル!」というこだわりが素敵。
 ほのぼのしながら世界観にじっくり浸る前半と、事件が起こり物語がぐんぐん進んでいく後半の二つに、大きく分かれています。
 タイガと一緒に新しい世界や過去に触れ、謎に遭遇し、翻弄されていると、子どもの頃のわくわくドキドキを思い出しました。
 平易な文章で描かれる物語には、大人たちの温かい眼差し、少年たちの成長が満ちています。謎はまだ残っていますが、ひとまずのハッピーエンドにはほっこりしますね。きっとタイガなら素晴らしいパイロットになってくれることでしょう。
 懐かしい気持ちを思い出すことができる、素敵なお話でした。


発行:かぶ☆けん文芸部
判型:新書 284P 
頒布価格:800円
サイト:かぶ☆えき

レビュワー:藍間真珠