父が死んだ。心臓麻痺だったそうだ。喪主として通夜の仕事をこなす間、ふとしたときに父への思いが湧き上がってくる。母に先立たれ一人で寂しげに暮らしていた父。こまめに会いに行ってやりたいという気持ちよりも面倒くさいという気持ちが勝りしばらく実家に寄り付かなかったことを、ここにきてようやく後悔した。翌日の告別式には多くの人が集まっており、あまり交友関係の広くなかった父にこんなにも死を悼んでくれる人がいるということに驚いた。そういえば一ヶ月ほど前の電話でやけに機嫌が良かった父に理由を尋ねると、趣味の仲間が大勢できたと言っていた事を思い出す。そのときは「ようやく友人ができたのかよ」なんて馬鹿にしたように言ってしまったが、今となっては救われたような気持ちになるから不思議だ。だがここでちょっとおかしなことに気がついた。なんだか会場全体が生臭いのだ。釣り仲間が多いからだろうか。いや違う。これは参列者からの臭いだ。そして何故だろう、還暦を過ぎた父の告別式にこんなにも幼い参列者が多いのは。そして彼らは皆、一様にジトジトと濡れているのだ。私は再び思い出す。電話での父の言葉を。父の趣味とはなんだったのだろうか。