百物語をしようと言い出したのは誰だったか。冗談半分で酒とつまみを持って皆で集まった。
「誰だ、こんな蝋燭用意したの」
「あ、俺。うちに余ってたからさ」
答えたのはAである。
「こんなのすぐ燃え尽きちまうぞ」
「一つ話をするごとに一本ずつ消すんだろ、最初の方に使えばいいさ」
それはピンク色で、小さくて細い、誕生日ケーキに挿すような奴だった。
さて、Aは自ら一番手を希望した。Aは世間話でもするみたいに、ゆっくりと話し始めた。
「実は俺には妹がいたんだ。九歳の誕生日の翌日、事故で死んだ」
Aが持ってきた可愛らしい蝋燭は全部で九本である。
「家族でお祝いをしたんだ。あいつはふうって、全部吹き消した。ほっぺ膨らまして、すげぇ可愛かった。大事な大事な一人きりの妹だった」
九本の蝋燭はすべて一度使用した形跡があった。
「俺はどうしてもまた妹に会いたいんだ」
Aが、ピンクの蝋燭を一本、吹き消す。
百物語をしよう、と言い出したのは。