その夜はしし座流星群の活動がもっとも盛んな年で、当時小学生だった私は流星観測のため、ひとりで夜の学校へ向かっていました。
大人になった今でも、人気のない夜の道を歩くのは怖い。それなのに何故、怖がりな子供だった私は、そんなことをしようとしたのでしょうか。
私は登下校の時とまったく同じルートを辿りました。そうすれば安全だと、おまじないのように思ったのでしょう。
小学校は私の家から徒歩十分程の場所にあり、向かう途中にある歩道橋から校庭とそこに面した校舎の窓が見えます。
見下ろすようにして私はそれらを見て、空を見ました。よく晴れた夜空は流星を見るのにうってつけだと、私はもう一度、校舎へ視線を戻しました。
すると、さっきまでぴっちりと閉ざされていたはずの窓が少し開き、真っ赤な着物がひらひらとはためいていたのです。何度目を閉じ視線をそらしても、それはそこにありました。
私は声にならない悲鳴を上げ、その場から走り出しました。流星群のことはもう、頭から消えていました。
今でもあれがなんだったのかはわかりません。ただ、あの、暗い夜の中でもはっきりとした赤い色だけは今でも鮮やかに思い出せ、背筋をぞわりと伝い走るのです。