【呪いのビデオテープ制作】(第二十七夜)

 当時僕が通っていた大学の周辺には、個人経営のレンタルビデオ屋がいくつもあった。一時悪い仲間と一緒に、ビデオ屋のテープを空のVHSとすり替えて、盗んだものを売りつけるという犯罪行為に勤しんでいた。
 ある時、ただすり替えるだけじゃつまらないと、仲間と熱心に取り組んだ遊びが『呪いのテープ』を作ることだった。大学にあった古い高感度カメラで、夕暮れの裏路地や廃ビルを長時間回していると、それだけで雰囲気がでるものだったし、編集の真似事は随分と面白いものだった。
 そうして出来上がった『呪いのテープ』をばら撒き、引き替えに店のテープを盗んで回る。そんな事をしているうちに、ビデオ屋はどんどん潰れていった。商品を盗まれた挙句、客に『呪いのテープ』の出回る店、なんて噂されれば商売は立ち行かないだろうと、他人事のように思ったのを覚えている。
 大学を卒業した後、とある経緯からレンタル落ちのビデオテープを大量に引き取ることになったのだが、その中に見覚えのあるVHSを見つけた。ばら撒いたテープは、仲間だけに分かるように印をつけていたから、すぐに思い出したのだ。若気の至りと割り切れない苦い思い出の品だが、それとは別に抱いた懐かしさは、僕にそのテープを再生する気にさせたのだった。
 だが、テレビに映し出された映像は、自分にノスタルジーを呼び起こすようなものではなかった。ダンボールの積み上がった狭い倉庫のようだが、撮影した記憶も、編集した記憶もない、初めて見る映像だった。
 少ししてカメラに映りこんだ人物には唯一見覚えがあって、潰れたビデオ屋のうちの一つで、店主をしていた中年男性だった。彼はカメラの前で台に上ると、それを踏み外して宙吊りになる。生活に困窮した人間の末路が、流れ続ける断末魔の形相が、そのテープに上書きされていた。
 遊びのつもりで作ったそのVHSには、本物の呪いが収められ僕の元に戻ったのだった。