あなたが部屋にいるところを想像してみて下さい。
右手を見て、左手を見て、それが見慣れた自分の手であることをあなたは理解します。そして床の感触、壁紙の色、家具の配置を見て、そこがあなたの部屋であることを確認して下さい。目の前には見覚えのある銘柄のペットボトル、コンビニの袋、筆記用具などがあります。次にあなたは、部屋の中を確認します。
窓の位置、玄関の電気、ドアノブを握って異常がないことを確認します。特に「きちんと鍵がかかっているかどうか」確認して下さい。それから最初の位置に戻ると(なぜか先程は気づかなかったのですが)あなたは一冊のノートがあるのをみつけます。
さて、何が書かれていましたか?
あなたは正直「わけがわからない」と考えます。ノートいっぱいに書かれた文字は意味を成しておらず、あらゆる方向から殴り書きしたような稚拙な筆跡は、少なくともあなたのものではありません。ところどころが「くらイ」「水ズ」「オトうさん」と読めて、あなたはノートの最後にある「タケシタカナエ」が、署名かも知れないと考えます。
あなたはタケシタカナエを知っていますか?
今までにタケシタカナエを見たことはありませんか?
あなたの同級生にタケシタカナエはいませんでしたか?
小学生の時にいじめられていた転校生は?
高校の二つ下の後輩を覚えていますか?
昨日食べたものを思い出せますか?
自分の戸籍謄本を読んだことがありますか?
友人全員の顔が思い出せますか?
店員の名札に見覚えはありませんでしたか?
最後に、目を閉じてみて下さい。
そこに浮かんだ顔はタケシタカナエです。