文字と紙、電子と液晶、そして物語(第七十三夜)

 一番怖いことはなあに?
 アリスが問う。
 私は答える。
 誰にも読まれないこと。
 アリスは首を傾げる。
 どうして?
 アリスの問。
 だってそれは、私が存在しないことだから。
 私の答えは要領を得ない。
 別にいいんじゃないの。
 アリスが笑う。
 いや、いや、よくはない。
 私は必死に取り消す。
 文字と紙、電子と液晶の中に、私は生きているんだ。
 それだけが、私の存在証明なのだ。
 そんなモノ。
 アリスが鼻で笑う。
 存在しないと一緒じゃないの。
 アリスが続ける。
 肉体を、行動を、確信を措いて世界は存在しないの。
アリスの無邪気が私に突き刺さる。
それでも、それしか、私には……。
私の酷くおぼろげな存在は、ただ……。
誰もアナタを読みたいなんて思わない。
アリスの悪意を止める術はないモノか。
やめろ、やめろ、やめてくれ。
私は強く言う。
一方的ね。滑稽なまでに。
アリスが断じる。冷笑を交えて。
ああ、一方的だ。だが、物語とは結局そうなのではないか。
私の弁明に、アリスは。
そんな下らないモノガタリなら、いっそ終らせましょ。
アリスが莞爾と笑って、指を鳴らす。
パチン、と、弾けた。
終りの言葉は。
誰か、この物語を読んでくれ。
そして私を証明してくれ。
《おしまい》