第四十夜

鶴川に引っ越した後のことです。その日の講義は二限からだったので、家でゆっくりしていると二階から騒がしい物音が降ってきました。どうやら猫が走り回っているようです。その頃、飼っていた猫は、何かのタイミングで、いきなり家中を走り回る猫でした。日頃の運動不足を解消するように全速力で家中を走り回っては、偶然、トイレから出てきた妹にぶつかって伸びたりしていました。よくあることなので特に気にせず居間に向かいます。居間のソファで猫が寝ていました。ぐでんと横になっている猫を見るだけで、なんだか和やかな気分になります。お茶を入れて猫を撫でながら、午後のゼミのことを考えている内に、二階の物音が気になりました。猫は、ここにいるのですから、二階の物音は、猫の走っている音ではありません。階段を半ばまで上がると、音は、ぴたっと止まりました。不審に思いつつ一階に戻ると、また鳴り始めます。その後、私は、二階を隈なく見て回りましたが、音の正体は分からず仕舞いでした。その日、私は二限に遅刻しましたが、脱線した多摩モノレールには乗らなくて済みました。