いるのはわかってたよ、最初から。不動産屋のおっちゃんのすぐ後ろで知らないばあちゃんが正座してんだもん。そりゃビックリしたよ。でも、ニコニコしながらちょこんと座ってるところがかわいくてね。座敷わらしのばあちゃん版みたいなもんだと思えばいいかって。家賃の割にいい部屋だったし。
二週間くらい経った頃かな。夜、寝てると変な音が聞こえてくるようになった。ギチ、ギチってなにかを擦ってるような音。それがやたらでかい日があってさ。俺、眠り浅いから起きちゃって、なんだよって目開けたらすぐ横にあのばあちゃんが座ってた。そういや寝るとき見かけたことねーなって思って、なんとなくそっちのほうを見たんだ。
そしたらすんげー形相でなんかブツブツ言ってんの。ギチィ、ギチィって歯ぎしりしながらさ。怖くて動けないでいたら、だんだんなに言ってるのかわかるようになってきて。
――キキエロココココロスキエロシシネコロスシネシネシネシネ……
あ、これダメなやつだ。そう思った瞬間、気でも失ったのかね。気づいたら朝だった。で、もうこんな部屋ムリーってなって親父に頭下げて帰ってきたってわけ。まぁ、なんにせよ、ひとり暮らしは当分しなくていいや。