トンネルを抜けたら夏だった。おまけに夜だったはずなのに、太陽が燦々と輝く真昼だった。
車から降りて、しばし呆然とする。
頭には毛糸の帽子、首にはもこもこマフラー、分厚いコートを着て、手にはアツアツ肉まん。車の中のドリンクホルダーには、ぬるくなりかけの缶コーヒー。
近くのコンビニに欲しい雑誌がなく、仕方なく一山向こうのコンビニに行こうと、車を走らせてトンネルを抜けたらこれだ。確かに、さっきまで真冬だったのに。
怖い噂話なんざ聞いたこともない、ごくありふれた県道のごくありふれたトンネル。名前すら知らない。
海ではたくさんの海水浴客がきゃっきゃと騒いでいる声が聞こえる。
暑さに服を脱いだ。流れる汗に、これが現実だと思い知らされる。
もうどうでもいい。ちょうど現実から逃げたかったんだ。
俺は車に戻ると、防寒具を全部放り出して、下着だけ身につけて、その楽しげな声の聞こえる海に向かって走り出した。
俺は知らない。
ナビに映し出された場所が、海の真上だということを。