【幽体離脱】(第五十五夜)

 眠りに就いていた私は、気づくと体が宙に浮いていた。眼下のベッドの上に眠っているのは確かに自分で、私は今自分が幽体離脱しているのだと悟った。
 心霊体験などした事がなかった私は、初めての経験にわくわくした。私は天井付近に浮かんでいたが、外に出ようと念じ込めた。次の瞬間、自分の家の屋根を見下ろしていた。
 やった! もっと上へ昇ってみよう。
 私はどんどん上昇し、夜の街を見、そしてさらに暗闇に光を灯す地上を見下ろした。さらに昇ると、青く丸い地球を見い出した。
 素晴らしい。満足した私は、帰ろうとした。
 しかし意に反して下降しようとしてもできず、逆に私はさらに上へ上へと昇ってゆく。
 ぞっとした私は、必死で目を覚まそうとした。しかし、全くの無駄だった。地球がどんどん遠ざかってゆく。
 ああ……私は、いつかブラックホールに飲み込まれてしまう事だろう……