駅のホームで終電を待っていると、線路に、スーツ姿の中年男が4人ばかりえっちらおっちら走ってきた。線路にである。幼児が電車ごっこするみたいに、輪にした紐を握ってその内側に一列に並んで、弾むようなステップでやってきて、僕の目の前で止まった。
身を突き刺すような恐怖を感じたのは、先頭にいる中年男が去年線路に飛び込み自殺した元上司だったからではない。
元上司がとびきりの笑顔だったせいでもない。
ホームにいる他の誰にも彼らが見えていなかったせいでもない。
後ろにいる男たちが眼球を垂らしたり内臓を垂らしたりしていたせいでもない。
彼らが持っている紐が臍の緒に見えたせいだ。
僕の妻は現在妊娠中である。