【大きくなるということ】(第三十三夜)

 宵闇の迫る公園で、一人遊んでいる男の子を見つけた。傍に見守る大人の姿も無かったので、声をかけてみた。
「そろそろ帰らないと、お母さん心配するよ」
 四~五歳ぐらいに見える男の子は、私の顔を見るとなく、砂場の砂を掘りながら答えた。
「うち、おかーさんいないから大丈夫」
 あー、悪い事したな……と思っていると、男の子がこちらを振り返った。
「たって僕が食べちゃったから」
「えっ!?」
 驚く私を余所に、男の子は砂遊びをしながら続ける。
「ぼくがお母さんのお腹に居る刻、お母さんがえいようをくれたんだ。それをよーすいの中に沢山吐き出して、すごく汚くなっちゃったから、ぼくは外に出たんだ。おとーさんがいっぱい泣いてたから、ぼくもつられておっきな声で泣いたけど、ほんとはそんなに悲しくなかったんだ。だってもう食べる所なかったし」
 唖然としている私に、男の子はにっこりと笑った。
「でもね、そろそろおかーさんから貰ったえいようも終わっちゃうから、今度はおとーさんから貰うんだぁ。きっとくれるよね?」
 返事が出来ないでいると、砂遊びの熊手を手に、男の子が立ち上がった。
「おとーさんの次は、おねーちゃんから貰うねっ」