【最初の約束】(第三十一夜)

 花火キレイだったね。最後の滝みたいな奴、私大好きなんだ。今年もぎりぎり見れてよかった。遅れちゃって、ごめんね。
 そういえば、さ。ちょっとヘンな話しだけど。
 時々、誰かに見られてるって感じること無い? それか、人の気配がするとか、ヒソヒソ声が聞こえる、とか。暗い夜道を歩いてるときとか、お風呂タイムとか、布団に入ったときとかさ。……無い? そっか、良かったね。
 そういうのって、大抵何かが後ろめたかったり、後悔してたり……そういう、誰にも言えないことを抱え込んでる時なんだって。やっちゃったことを謝ったり、正したりは今更できないけど、誰かに知ってほしい時に……うーん、自分で作った分身、みたいな? そんな感じなんだって。見えないけど、ちゃんとどこかにいるって。ラジオで言ってた。
 うん、よく分かんないよね。
 私も、よく分かんなかったんだけどさ。
 約束、すっぽかしちゃったなって。それだけずーーーーーっと悔やみ続けてたら、いつの間にかここにいたの。私の体は、多分まだアパートに転がって、ぎりぎり生きてるんじゃないかな。
 花火? そうだね。それもだけど。
 ずっと一緒にいようって、約束したよね?