保護者会の日には仕事がある。
私たちは講堂で折り畳み式パイプ椅子を並べていた。生徒集会や保護者会のある日はいつも持ち回りで生徒が椅子を運んで並べるのだ。
たったー・たったー・た、たたたたたー
講堂には体育のリズム運動で使う曲が流れていた。確か「楽しき農夫」という曲だ。
「なんでリズムの曲鳴ってるの?」
友だちが問う。椅子を畳みながら。
「さあ。音量の確認?」私も考えずに答える。「ずっと前にもいっぺん鳴ってたよ」
「なんかさ、今日、椅子多くない?」
「ていうか、ひとが少ない?」
「サボりかー」
椅子並べ、早く終わらせたい。次の授業に遅れる。
たったー・たったー・た、たたたたたー
いつの間にかその曲のテンポに合わせて椅子を運ぶ自分の足取りに気付いた。いや、他の子たちもみんな、あのテンポに乗って椅子を運んでいる。
椅子を運ぶ足取り、たったー
運んでゆく、たったー
列に並べて置く、た、たたたたたー
たったー・たったー・た、たたたたたー
──がくん。
いきなり視界が低くなった。あれ?
「今日、椅子の数多くない?」
「ていうか人数が少なくない?」
「椅子運び終わらないね」
「予鈴鳴っちゃうよ」
私は何か云おうとして、声が出せないことに気付いた。友だちがパイプ椅子になってしまった私を折り畳み、運んでゆく。いや、それ椅子じゃないから!
私だから! 友だちが私を開いて組み立てて決まった列に並べる。気付いてよ!
たったー・たったー・た、たたたたたー
保護者会の日には仕事がある。