【オイノリ】(第二十二夜)

小さい頃、ぬいぐるみが大好きだった。
枕元に並ぶ、ウサギ、ハムスター、クマ、パンダ、他にも色々綺麗に並んでいた。みんな名前がついていた。
せっかくの子ども部屋でも、一人寝が寂しく、幾度となく化物に追いかけられる悪夢を見るため、彼らは私の夜のお守役だった。怖い夢を見ませんようにと、毎晩、全部のぬいぐるみの名前を呼んで、眠りについた。まるでお祈りね、と母に笑われながら、毎晩続けた。
ある晩、暑くて寝付けなかった。魘されては目が覚め、まどろんではまた魘される。
幾度か繰り返し、いつもとは違って、それら化物にただただじっと睨まれるだけの悪夢を見た。
跳ね起きた。
肩でぜいぜいと息をつき、真っ暗な部屋に恐ろしくなって電気をつけた。
すべてのぬいぐるみがこちらを見ていた。
棚の上にあったフランス人形も、ダルマも、かわいらしい日本人形も、全部こちらを見ていた。
悲鳴をあげてすべてのぬいぐるみをうつ伏せ、人形は壁側に向けた。
それ以来、悪夢はぱたりと見なくなった。