第十七夜

ポンタ。               
 しっぽをふりふりいい感じー。
 親はない。兄弟もない。
 天涯孤独に人の世に放擲され街の便利ショップで日夜働くことを余儀なくされた。
 苦しいです、サンタマリア。
 声をはりあげ、明るく歌うのは金のため。
 むきだしの冷えたヘソを掴んで痛みをこらえて愛想笑い。
 お客様の笑顔のため、その心をつかむため。
 誰に命令されたのかも、今では忘れてしまった。
 雑誌コーナーで立ち読みする男のそばで、スイーツを物色する女子高生にまぎれて、深夜に買い出しに来たカップルの前で。
 ポンタポンタポンタポンタ。
 飛び跳ねて踊る彼の虚ろな瞳を、人は誰も見ていない。
 苦しいです、サンタマリア。
 必死になればなるほど忘れられるのです。風景になるのです。
 しかしやめるわけにはいきません。
 忘れていたことを思い出されるのは、辛いことです。
「そういえば最近聞かなくなったね」
 そんなことを言う前に、気づいてください。
 誰か。