【友人】(第十二夜)

「助けてくれ、」
 入院中のオレの病室に、クラスメイトのユウジが訪ねてきた。蒼い顔をして、まるで何かに脅えているかの様子。どうしたのかと尋ねると、彼はゆっくりと話しはじめた。
「このままだと、今夜オレは殺されてしまうんだ。」俯きながら彼は言う。「一週間前、クラスメイトのAから怪談を聞かされて、」
 あまり接点のないクラスメイトのAの顔を思い出しながら、オレは耳を傾けた。ユウジは聞いた怪談の物語を訥々と語っていくが、しかしそれが何故「殺される」などという物騒な話に繋がるのか、理解できないでいた。そして、ユウジは話の結びにこう言った。
「この話を聞いたなら、一週間以内に別の人間に話さないと呪い殺される。」
「え?」予想していなかった言葉に、不安が背筋を撫でる。「つまり、呪いから逃れる方法を一緒に考えてくれ、ということだよな、」
 彼が訪ねてきた理由を、オレは縋るように確認する。
「いや、オレはもう助かったから、」ユウジは立ち上がり、憐れみの視線をオレへと向ける。「お前も頑張れよ。まあ、話す相手がいればだが……、」
 個室の病室の戸が、ぱたりっと閉じた。