【※※※※文字化け※※※※】(第壱夜)

 百話目の原稿がまた消えた。これで十五回目だ。消えた、というのは正しくない。何度書き直しても、文字化けしてしまうのだ。うんざりしながら新規の文章作成ページを開き、書き直しにかかる。蝋燭は残り一本。今夜中に仕上げてしまわなければ入稿に間に合わない。これで最後だ。終わらせよう。テキストを入力し始めた途端、世界が歪む。酷い耳鳴りと眩暈に目を瞑る。カレンダーには斜線で印が付けられている。あと、何日だろう。ふと窓の外を見ると朝焼けとも夕暮れともつかない薄暮に包まれている。今は何月だった?何故、この原稿を書いていたのだった?誰が、何の為に、始めた?
 思い出せない。
そもそもこれは現実の出来事なんだろうか。夢の中で原稿を書いている事もあるし夢の中でイベントに参加している事もある。じゃあこれも夢の中の事かもしれない。
いつもの夢の続きか。
そうか。
じゃあ、これで、ようやく、おしまい、なんだ。

                       最後の火が、消えた。