第十三夜

父の兄であり、私にとっての伯父が、まだ福岡に住んでいた頃のことです。高校二年生だった私は『ディジタル・ホームズ』の大ファンで、福岡のストリートミュージシャンを、この目で見たいと思っていました。受験勉強が本格的になる前に、遊びに来ると良いと誘ってくれた伯父は、既に息子をふたりとも送り出しており、話し相手を欲している様子でした。伯父の家を訪ねた翌日、福岡市内を散策していた私は、広い公園、たしか大濠公園に来ていました。坂本真綾を聞きながら歩いていた私は「悪くない公園だな」と楽しんでいましたが、公園の一角に至り、思わず凍りつきました。今までに見たことのないほどの鴉が、一箇所に集まっていたのです。二十匹以上はいました。鴉たちは、黒一色の浴衣を着た、前髪ぱっつん幼女を囲むように地面を歩いたり、飛んだりしていました。幼女は、まっすぐにこちらを見ています。私は、即座に背を向けて走って逃げました。振り返る勇気はありませんでした。ただただ、怖かったことを覚えています。