第十七夜【異世界の夢】

その光景は、異様なほどのリアリティだった。自分の全感覚も異常に研ぎ澄まされている。
目の前の空間に浮かんでいるのは、巨大な足だった。その向こうには、やはり巨大なモアイ像のような石の顔があった。
ここは明らかにこの世ではなかった。今にも何か怖ろしい事が起こりそうな緊迫感に、発狂しそうな恐怖を感じる。
身体の制御が利かず、俺はこの不気味な世界の中をゆっくりと移動している。
「うわあああ!!」
俺は、自分の叫び声で目を覚ました。ああ、夢だったんだ……俺は、胸をなで下ろした。
「三○五号……吉本大樹、執行日だ」
ドアを開けて告げる声に、俺は我に返る。
そうだ、俺は死刑囚だったんだ……
死んだらあの世界に引き戻される……!
必死の抵抗も空しく、看守は俺を引きずってゆく……