第二十一夜【星の明るい夜】

ふと、お姉ちゃんのお話が聞きたくなって、隣の部屋へと向かった。
下る階段も、上る階段も、僕の部屋から漏れる明かりを吸い込んで、真っ暗闇だった。
きぃ、きぃ、と窓が風に揺れて嫌な音を立てていた。
几帳面なお姉ちゃんの部屋。ベッドは乱れていた。
足元には、封書があった。
中には一言だけ、
「また呼ばれた。耐えられない。今夜死にます」
そう書いてあった。
窓に駆け寄って下を見ると、無機質なコンクリートの歩道がちゃんとあった。
ほっとした僕の耳に、金切り声が飛び込んできた。
お父さんの寝室は、三階にあるんだ。
満月が煌々と、星々を殺しながら夜空を照らしていた。
お姉ちゃんのくしゃくしゃに歪んだ泣き顔と、目があった。
その目はうつろで、映り込んだ僕がしみ込んでしまいそうなほど平板だった。それもそうだ。はるか先の地面を見ているんだから。
額に鈍い衝撃が走った。
首の付け根が変な音を立てた。
後頭部が風を切るのを感じながら、僕は怒っていた。
大好きなお姉ちゃんと、ついでに僕を殺した、三階に住む親の皮をかぶった怪物に、怒っている。人の親かなんて分からない。誰でもいい。
だから、今日もどこかの三階の窓に、僕はへばりついているから。
見かけたら、諦めてね。