第二十夜【レジャーシート】

行楽シーズンに出かける方も多くなる季節になり友人家族と合同で近畿地方の、標高はさほど高くないが観光客の少ない山菜取りの穴場へ出かけた時のことを思い出した。穴場と言われているだけあって、きのこや野生の栗の実、ノビルなど山の幸が豊かで、大きな舞茸やツキノワグマの痕跡に大騒ぎしながら山を満喫していると、友人が変なモノを見つけたよーと呼びに来た。大人たちは河原のそばに停めてある車の近くで火を焚き、コーヒーを飲んで寛いでいた。山の中の変なモノ、と言えば植物か虫か何かだろう、と思って友人の後を付いて行くと、地面に半ば埋もれたレジャーシートがあった。見えているのはほんの一部であるが、運動会などで使われるカラフルな縞模様が雨曝しになり色褪せ土色の染みを滲ませて少し盛り上がった落ち葉の堆積した中に見えていた。何が変だと言うのだろう、と考えたのが顔に出たのだろう、友人がレジャーシートを指差しながら声を潜め、あそこ、動いてる、と囁いてきた。レジャーシートは呼吸に上下する腹部のように、脈打つ血管のように、曲げ伸ばされる関節のように、動いていた。その後友人は5年生の時に遠くの町へ引っ越してしまったので、動くレジャーシートを見た事を確認出来ていない。