第二十四夜【予約】

バイクにシェラフやランタンを括り付けて小旅行をするのが好きな友人は予約を入れない。食事も、宿も、行って空いていたら入ることにしているという。何度か理由を訊ねたが困ったような顔をして押し黙るので、酒の席で盛り上がっていた時に乞うように訊き出したところによれば、予約をすると必ず予定が覆って行けなくなり、行けなくなった場所で何かが起こってしまうのだという。酔った頭にはどういう事かわからず、詳しく教えて呉れと頼むと、何本か古いメールを見せてくれた。レストランやグリーン車や宿の予約確認のメールだった。予約された日付と場所を確認すると、どれも火災や地震やひどいものになるとアメリカの大型ハリケーンがその日時にその場所を見舞っていた。俺が追い回されているのか俺がちょうど後ろを付いて回っているのかわからんのだ、と彼は苦笑いしていたが、とりあえずバイクの点検はちゃんとして下さいねとお願いしておいた。