「あいつ、自殺だなんて、何があったんだろう」
「最近、『魔法使いになった』って鼻息荒くしてたんだけどな」
「魔法使いって、あれ、ネットスラング的な意味だろ」
「そうなんだけど、実際、三十路の誕生日を迎えた日から、変なものが見えてたみたいでさ」
「変なもの?」
「フラグ」
「……それって、ゲームの?」
「そう。奴の話を信じるなら、現実世界でも、どんな行動をすれば女の子の心を動かせるだとか、今どれだけ女の子の心がこっちに向いてるかとかが、立ってたり、伏せられたりしてる『旗』の形で見えるようになったんだと」
「それ、完全にチートじゃねえか。そんなすげえ能力持ってて、どうして自殺なんて」
「ルートが、見えなかったのかもな」
「ルート?」
「自分が、お望みの人生を送るためのルートが、さ。フラグが見えるってことは、フラグが『存在しない』こともわかっちまう。最初から存在していない、設定されてもいないフラグを立てることなんざ、できやしない。その事実に絶望しちまったのかもな」
「魔法使いってやつも世知辛いな」
「魔法使いになっちまった時点で、十分想像できるオチだとも思うけどな」